速さだけで異世界蹂躙、ハーレム建国

@mintjaming

第1話 二次元は浮気に入りますか?

「わたしだけ愛してくれると思ってたのに…」




二股がバレた。というよりは自己申告した。




臓器を貫いた包丁の刃渡りを実感しながら、起きた事象を理解する頃には俺の意識は薄れていた。






俺、小林こばやし 有希ゆきは女の子が好きだ。




美少女が好きだ。




美女が好き。




美熟女も大歓迎。




可愛いや美しいに貴賎なく、幼い頃よりそれに触れたいと考え続けていた。




物心ついた頃にはその為の努力を始めたし、幸いにも努力に才能が応えてくれた。




小学生には誰よりも足が早く、中学生は誰よりも喧嘩に強く、高校受験は誰よりも勉強をした。




しかし、モテない!!




早く走れば顔が本気で怖いと言われ、喧嘩をすれば暴力的な人はイヤと言われ、勉強をすれば何考えてるか分からないと言われる。




そして何よりみんなに可愛いと言う様なチャラい人は無理!




これが決定打だそうだ。




いいじゃないか。可愛いものや美しいもの全てにそう伝える事は罪だろうか?




悲しいかな、おそらくそれは罪なのだろう。




少なくとも俺の意見は今生きているこの世で埋没すべき意見であり、結果が物語っている。




そんな自分にも転機が訪れた。




二次元の美少女達との出会いだ。




彼女達はどんな主人公にもその可愛さを余す所なく振り撒いている。




俺はそんな美少女達に傾倒していくのは必然であり、同時に俺の運命を大きく変えるゲームに出会った。




三国記〜強き美少女もののふ』




「三国志ではないのか…?あくまで世界観のモデルになったって事かな?」




というよりモデルとしても怪しい。曹操や劉備なんて名前は見つからないし、そもそも三国どころか何か国も敵が乱立してる。




僅かな中国要素に、日本名と思しき名前ばかり。自分の世界史程度の知識でも、幾つかの時代が織り混ざっているようにも見える。




「しかし、可愛い!ドストライクじゃないか!!」




衝動のまますぐに始めた。どうやら天禄と呼ばれる固有のスキルの様なものを鍛えながら、道中で助けた美少女を嫁に仲間にと、領地を増やしていくシステムらしい。




嫁システムでは最初に気になっていたレイという子を嫁にした。




茶髪をポニーテールにした快活な子。




吸い込まれるような髪と同じ茶色い瞳。




快活さに反して、柔和な笑みが似合う、誰よりも嫁力の高い子だ。




何より自分にはいなかった村の幼馴染という設定は素晴らしい。




そして彼女は自ら俺に嫁ハーレムを作れと進言してくれた。




そりゃそういうゲームだからと言われればそれまでだが、俺は自分で押し込むべきと考えていた価値観を肯定したもらえたような気持ちになっていた。




気付けば天禄も圧倒的な性能になり、多くの嫁ライフをエンジョイ出来ていた。




ちなみにゲームの進行は最初の村から出れていない。それくらい魅力的な子たちが多いんだもの。




しかし、二次元美少女に傾倒しながらも、高校一年生の夏休み、遂に俺にも三次元の彼女が出来た。




それは町でナンパをされていた所を助けるという、テンプレートかつ劇的な出会いであった。




助けた彼女の名前は西園寺さいおんじ 葉月はづき




お互いに一目惚れ、まだ1ヶ月とはいえ深い愛で結ばれているはずだ!




毎日メールや電話は絶やしてないし、彼女は常に「何してるの?」と俺の事を気にかけてくれてる。




幸せ冷めやらぬ高校1年の秋、いつもの様に美少女達と触れ合えるネットゲームに勤しもうとした折にふと手が止まる。




あれ、これって浮気じゃね?




ゲームをする前にちょうど彼女からメールが届いた。




「何してるの?返事が遅いから心配になっちゃった。もしかして誰かといるの?そんなことはないよね。」




いつも通り心配性だなぁと微笑みながらも同時に気付く。あ、二次元の嫁たちと一緒だ。




これ、浮気なんじゃね…?俺の今生きている世間様は間違いなくそう判断するよな…?




これは彼女に誠意を持って伝えるべき案件だ。




どちらとも真剣にお付き合いしていると。俺は全美少女が好きなんだと!




彼女に伝えよう。次のデートで。俺は全身全霊で愛を伝えるのみだと決意し、彼女に連絡を返した。




「どういうこと…ですか?」




デート先の公園で、




「つまり、正直に言うと、俺は君と同じくらいこのレイという子を愛しているんだ!他にもシャオとかハオとかカンナとか!真摯に君と向き合う以上、この事は伝えなきゃと思って。」




「それは私だけ愛してくれないと言う事ですか?というかどれだけいるんですか?」




彼女の言葉が凍っていく。




「結果的にはそうなってしまうかもしれない。ただ君が好きと言う気持ちに曇りはないよ!だから、認めてほしい。俺はこの二次元の美少女たちも愛しているという事を!」




 そこから先は記憶がない。激情した彼女を話を聞いてもらおうと宥めようとした事は覚えているが、逆効果だったのだろう。




 気づいた頃には、血が出ていた。




走馬灯というものを感じる。




フラッシュバックする景色の中、時が止まったかのように思考が回り始める。




西園寺さん、悲しませちゃったな…というかそもそもどっから包丁だしたんだろ…




沢山女の子が好きな事ってそんなに悪い事なのか…?




二次元の先輩方は沢山嫁がいると言ってたぞ…俺には無理だったのか…




ああ、願わくばもう一度美少女に囲まれるためのチャンスを!




「いいよ、あげる」




フラッシュバックする景色の中、茶髪のポニーテールの美少女が正面に映り込む。




「レイちゃん…?」




「おいで、ユキくんなら出来るよ。」




手を差し出す彼女に近づく程、意識も吸い込まれる様に遠のいていった。

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