およめさん
バブみ道日丿宮組
お題:激しい狐 制限時間:15分
およめさん
「お腹の中にあなたの子どもがいるの」
オフ会の帰りに一緒になった彼女がそんなことを口走ったので、
「同じ空気吸うだけで妊娠するのは都市伝説だから」
と、返した。
「ううん、本当にあなたの子どもができたの」
ほらと、手渡される書類。
そこには確かに子どもができたことを証明する文言が書かれてた。
だからといって、僕が親である証拠はどこにもない。
胎児をDNA検査するわけにもいかない。
「えっと……はじめましてだよね?」
酔った勢いで誰かを襲ったことはない。
だいぶ酔ったとしても、きちんとパジャマを着て、ベッドの上で起きてる。隣で知らない女性がいるわけもないし、男性がいるわけでもない。もちろん、子どもが寝てることもない。
あるとすれば、飼ってる猫が丸くなってるぐらい。
家のセキュリティはそれなりに強いもの。玄関はオートロック。しかも警備員付き。そんなところをすんなりと侵入するとは考えられない。すぐに捕まるのがオチである。
「2回目ですよ。はじめての時は山奥でしたが」
「?」
何を言ってるのかよくわからなかった。
山奥……? そんなところにいった記憶はない。川にも海にも最近は行けてない。
「あのときだいぶ酔ってましたからね。もしかすると覚えてないかもしれません。でも、情熱的でしたよ。優しい手でした」
血のめぐりが悪くなってきた気がする。
これは……ひょっとするとひょっとしてしまうのか?
「えっ……いや……そんなことはないと思う」
言葉が続かない。
「ぼ、ぼくたち、は、初めて、あ、あったんだよね?」
自分でもわかる慌てようだった。
「ですから、2回目です。こうすればわかりますか?」
すると、彼女の下半身……お尻部分から、9つのしっぽが出てきた。
茶色いもふもふだった。
「私狐人間なんです」
耳もぴょっこと頭から生えた。
「えっ?」
知らない現象が起こってた。
人外? そんなの空想だけじゃないの?
「まだ夜はこれからです。2回戦もやぶさかでないですよ。うふふ」
1回戦の記憶もないんですけど!? というか、妊娠させちゃったの、僕!?
「思い出してもらうことも大事ですので、家にあげてもらえますか?」
否定することも、肯定するもできず、僕は彼女を家に入れてしまった。
それが、僕にとっては彼女との初めての遭遇であった。
およめさん バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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