―第41話― 依頼

 「おーっす、リアトリスたち」

「……ん? おお」

「おい、反応薄過ぎるだろ!!」

「……何の、むぐむぐ、用だ、むぐむぐ、サントリナ?」

「いったん食事をやめろ!! まったく、教育がなってないな」


 そーですね。


「えっと、リアトリスさん。この方は……」

「サントリナとかいう、この街のギルドマスター兼ニートだよ」

「ギルドマスター!?」

「そ。ツツジちゃんだっけ? ……なるほどなるほど。君、相当強いんじゃないの?」

「そうなんですよ! ツツジは、リアと張り合えるぐらい強いんですよ!!」

「リアトリスが戦ってるところを見たことがないから何とも言えないけど、ジャスミンがそれほどいうってことは、本当に強いんだね」

「というか、さっきも聞いたけど酒場まで一体何の用なんだ?」

「ああ、そうだったそうだった。本題を忘れるところだったよ」


 ドカッと腰を下ろしたサントリナは、そのまま目の前にあった酒を飲み始め……。


「おい、それは俺が注文した奴だぞ!?」

「悪いな、リアトリス。食事の席ってのは、戦場であり、弱肉強食の世界なんだ」

「くっそ、こいつ……」




「ぷはぁ―! 仕事の後の酒はうまいな!!」

「お前、仕事してねえだろ」

「ちっちっち、甘いねえ、リアトリス君」


 よし、とりあえず一発殴るか。


「今日は、溜まりに溜まった書類の整理と、誰も手に付けてなかったクエストをパパっと解決してきたのさ」

「へえー、すごいですね」

「そうだろ、そうだろ?」


 皮肉なんだが。


「それで、その書類から見つかったもので、君たちに依頼したい仕事があるんだよ」


「「「依頼?」」」

「うん。ま、これはギルドからというよりも、俺個人からの依頼なんだけどな」

「お前からの依頼って、すごく胡散臭く聞こえるんだけど」

「ひでえなおい。ま、とりあえずこの書類に目を通しておいてくれ。お前なら、受けてくれるはずだぜ」

「はいはい」




「――ねえ、リア。もう読み終わった?」

「……ああ。一応な」

「どんな内容なんですか?」

「…………」

「リア?」

「あ、ああ、悪い。クエスト内容だったな。ほら、これだよ」

「えーっと、ネメシア周辺の環境調査……?」

「そ。まあ、表向きにはね」

「え、どういうことですか?」

「……昔から、この街の周辺にはかなり強い魔物がいるという噂が立っていてね。で、その噂の真偽のほどを確かめてきてほしいんだ」

「あれ? それだったら、そのまんま依頼すればいいじゃないですか」

「いやさ、俺もそう言ったんだけど、そんな噂程度の話のクエストは張り出せません! って、怒られちゃってさ。それで、どうする? 受けてくれるかい?」

「…………分かった。そのクエストは、俺たちが引き受ける。二人とも、いいか?」

「私はもちろん構わないけど……」

「私も問題ありません」

「よし、それじゃあよろしく頼むよ? 報酬のほうは期待しといてくれ」

「はいはい。じゃ、俺らはそろそろ帰るから」

「はいよ。……あ、そうだ。クエストを受けてくれたお礼と、リアトリスの酒を勝手に飲んじまった詫びだ。俺が払っといてやるよ」

「「ありがとうございます」」

「じゃあな、サントリナ」

「おう、またな」


 ――ネメシアか。

 まさか、またあそこに行くことになるとはな。

 ……サントリナの奴、狙ってやりやがったな。

 ったく、余計なことしやがってよ。


「帰ったら、たっぷりお返ししなくちゃだな」


 そう呟いた俺の声は、少しばかり鼻にかかっていた。

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