―第7話― 能力
「俺の能力は」
そこまで言って、強烈な吐き気に襲われた。
「ちょ、吐い、大丈夫!?」
視界が暗転し、誰かの声が聞こえた。
『だから言ったのに』
その瞬間、様々な光景が脳内を駆け巡る。
なんだ、これ……。
こんな光景は、知らない……。
「ちょっと、リア!」
「ジャ、ジャスミン……」
「どうしたの!? 急に吐いたりして……」
「い、いや、何でもない……」
「そんなわけないでしょ!?」
「いや、俺にも何が起こったのか……」
「……とりあえず、今日は帰りましょう。あんなに強いやつを相手にしたんだもの。疲れが来たのかもしれないわ」
「ありがとう」
ジャスミンの手を借り、何とか立ち上がることができた。
「さっきの声……」
「何か言った?」
「いや、何でもない」
さっきの声、どこかで聞いたことがあるような……。
「あ、そうだ。能力について話してなかったな」
「今度話してくれればいいわよ。今はとりあえず休みなさい」
「いや、せっかく覚悟ができたんだ。今話さなきゃ、いつまた覚悟ができるかわからない」
「いや、でも……」
まだごにょごにょ言っているジャスミンを遮り、俺は能力について話した。
「俺の能力は、“口に出したことを現実に発現させる能力”だ」
「!?」
「あー、えーっと、どうした?」
急に黙られると、こっちも反応に困ってしまう。
「……あんた、すごすぎない?」
「へ?」
「すごすぎるわよ!! 何よ、その能力! マジで最強の能力じゃないの!?」
「ええと……」
さ、さすがにここまで食いつかれると……。
「制限とかはあるの?」
「いや、俺の知る限りではない、と思う……」
「チーター!! ずるいわよ、そんな能力を持ってるなんて!」
うーん、この反応はさすがに予想外だったな。
「というか、なんであんたは能力を隠してたの?」
「こんな能力だったら、確実に面倒ごとに巻き込まれるだろ? それが嫌だったんだ」
「……そんなことなら、もっと早く私に行ってくれればよかったのに……」
「うん、まあ、そう……だな」
「どうしたの?」
……なんだ?
何かが引っかかるような気がする。
「……っと」
「大丈夫!?」
「気分が悪い。というか、吐きそう」
「ちょ、ちょっと待」
「!!!!!!」
「うう、ジャスミン、ごめん……」
再び胃の中のものをぶちまけた俺は、そのままぶっ倒れ、ジャスミンに背負われていた。
「いいわよ、このくらい。家に着いたら、早く寝るのよ」
「うん」
「……なんかあんた、気味が悪いくらい素直ね」
「おい、普通に失礼だからな」
「ごめんごめん」
……よかった。
話したのがジャスミンで本当によかった。
今まで通り、普通に接してくれる。
それは、本当に幸せだ。
今もこうやって、俺のことを気に掛けてくれている。
俺のことを背負って……背負って。
「なあ、ジャスミン。そろそろ下ろしてくれないか?」
「どうかしたの?」
「いや、あのー、えーっと……」
「なによ。早く言いなさいよ」
「いやさ、男の俺が、女性に背負われているのを街の奴らに見られたくないというか、なんというか……」
「なに? 恥ずかしがってんの?」
「そこまでわかってるんなら……」
「フフ、この私がそう言われて素直に下ろすとでも?」
「おい、お前、まさか……」
「このまま街の英雄様を背負って練り歩いてあげるわよ!」
「やめろぉぉぉおおお!!」
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