―第4話― 夢現

 俺は、先の戦闘の影響で眠っていた。

 ……はずなのだが。


 気付けば俺は、真っ白な部屋の中で椅子に座っていた。


「いやあー、さっきの戦い、とても素晴らしかったよ。それでこそリアトリス君だ」


 そして目の前には、サングラスをかけた謎の男が座っており、なぜか拍手を送られていた。


「えーっと、少し質問を言いですか?」

「どうぞ。大抵の質問には答えられると思うから」

「あなた、誰ですか? 俺、さっきまで寝てたと思うんですけど。そもそも、ここはどこですか?」


 すると男は、少し考えるような素振りを見せた後。


「まずは最初の質問から。俺のことは、ルビーとでも呼んでくれ。それじゃ、二つ目。君は確かにさっきまで寝ていた。というか、今も寝ている。そして三つ目。ここは、夢と現実の間に当たる場所だ」


 は?


「おや、納得できていないようだね。それじゃあ、簡単に説明しよう。俺は、君の夢に割り込んできたのさ。オーケー?」

「いやいや、意味が分からん! は? 夢の中に割り込む? そんな魔法、見たことも聞いたこともないんですけど!?」


「そりゃあ、魔法じゃなくて能力だし」


「は? 能力者? あなたが?」

「うん」


 なるほど、能力ならありえるな。


「もう一ついいですか?」

「あ、俺は君の敵じゃないぜ」


 ……俺、何も言ってないのだが。

 もしかしてこいつ、俺の心を読んだのか!?


「その通り。夢の中なら、俺は何でもできるからね。その代り、現のほうには干渉できないけどね」

「……それで、何が目的ですか?」


 もうなんか、いろいろ諦めた。


「目的? 特にないよ。強いて言うなら、君に少しアドバイスをあげようと思ってね」


 アドバイス?


「君の悩みを解決するなら、なるべく早めにしたほうがいいぜ。それと、明日は予定を開けておくこと」

「悩みとかないんですけど」

「……そうか」

「それと、予定を開けろってどういうことですか?」

「そっちは明日のお楽しみってことで。おっと、そろそろ時間だな。ほら、早く起きな。もうそろそろ、ジャスミンちゃんが家に来るはずだ」

「ちょ、ま……」


 俺の言葉を遮るように、ルビーが指を鳴らした。

 その瞬間、俺の視界がぼやけていき……。

 …………。




 そこで俺は目を覚ました。


「リア、いるの? いるなら、早く出てきなさい」


 ……あいつの言うとおりになりやがった。

 本当に何者なんだ?


「リアー、早く返事しなさい!」

「今行くー!」






 ……ここはどこ?

 気付けば私は、真っ白な部屋の中にいた。


「あれ? 私、さっきまで寝てなかったっけ?」

「そうだよ」

「きゃぁぁあああああ!!」

「うわぁぁあああああ!!」


 …………。


「もう、いきなり悲鳴を出さないでくれよ。びっくりしたじゃないか」

「こっちの台詞ですよ!」


 目の前にいたのは、サングラスをかけた謎の男。

 見た感じは、ただの気さくなおじさんといった感じだ。


「さてと、初めましてだね。ジャスミンちゃん。僕のことは、ルビーとでも呼んでくれ」

「えっと、なんで私のことを知ってるんですか?」

「君のことは、結構前から知ってるよ。君が思ってるよりも、ずっと前から」

「そ、そうですか。というか、ここはどこですか?」

「ここ? ここは、夢と現実の間さ。僕の能力で君を呼び出したんだ」


 なるほど、能力者か。


「さて、せっかくの機会だ。せっかくだから、君にも少しアドバイスをあげよう」

「君にも?」

「ここに来た他の人にもアドバイスをあげてるからね」


 アドバイスか。

 リアトリス以外の人からもらうことなんてほとんどないし、なんか新鮮な感じね。


「それじゃあ、一つ目。リアトリス君について知りたいなら、明日、彼と一緒に遊びにでも行ったらいい」

「あなた、リアトリスまで知ってるの?」

「もちろん。彼もここに招待したことがあるしね」


 リアも来たことがあるのか。


「それじゃあ、二つ目。君は彼に対して憎からず想っているようだが……」

「な!?」

「おや、違ったかな?」

「そういうのじゃないですよ! 私はただ……、って、ニヤニヤしないでください!」

「いやあ、君があまりにも面白い反応をするものだからね。さて、続きを話そうか。彼は、君が考えている以上の人間だ。あらゆる面においてね」

「それってどういうことですか?」

「それは、明日のお楽しみということで。そして三つ目。目が覚めたら、すぐにリアトリスのところに行きなさい。そして、明日の約束を取り付けるといい」

「わかりました」


「それじゃあ、最後にもう一つ。君が困ったときは、リアトリス君を頼るといい。そして、彼が困ったときにも君が助けなさい。これから先、お互いを信頼するということがとても重要になってくる」


「わかりました」


 その返事に満足したのか、彼は大きくうなずいた。


「さて、そろそろお別れの時間だ。それじゃあ、明日のデートを楽しんできな!」

「デートじゃありません!!」


 彼がにやけ顔を浮かべ、指を鳴らした途端、私の視界がぼやけていき……。

 …………。




 そこで私は目が覚めた。

 あれはただの夢だったのだろうか。

 それにしては、妙に現実っぽかったなあ。

「さて、リアの家に行こうかしら」

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