やり直すって難しい でもやり直してしまったら・・・

FLAKE

第1話 死後の世界と思ったら・・・

「バーン」

大きな衝撃音とともに、あっけなくおれは死んだ、多分死んだ。

 ひらひらと車から放り出されて、空中を何回まわったのだろう?

   ・

   ・

   ・

 しばらくすると目は見えていないが何故か意識が戻っている。でも何かに包まれていて身動きが取れない、

(これが死後の世界なんだ。)

   ・

   ・

   ・

しばらく俺はそのまま動かないでいたが、

(俺、今確実に意識がある。)

恐る恐る目を開けると少し光を感じることは出来たがほぼ暗闇の世界で、

(やっぱり死んだんだ・・・。)

そして何か顔の周りに当たるものを感じ、手を動かすと何かが当たった。

(?・・・。)


柊真しゅうま起きなさい。遅刻するわよ。」

(天国か地獄かわからないけどこの世界にも遅刻ってあるんだ。天国に行けるんだったら起きてもいいけど、地獄へ行くんじゃ起きたくないなー。)

俺はおかしなことを考えていたが、疑問が湧いてきて、

(柊真? 今そう呼んだよな? 凄いね、俺の名前もわかってるんだ。何か不思議だな。)

再びおかしなことを考えていると、目の前がいきなり”パッと”明るくなりはっきりと自分の周りの景色が目に入ってきた。

(あれ、これって?)

「早く起きなさい。何回言わせるの!」

 そこには掛け布団を片手に持ったどこか見覚えのある女性が立っていた。


 柊真はベッドの上から動けないでいた。しばらくするとまたさっきの女性の声が、

「早く顔洗って、ご飯食べちゃいなさい。」

うるさくも聞こえたが、何か懐かしくも感じ、

(俺は死んだんじゃないか? でもここって・・・? 俺の部屋? ここは・・・。)

 柊真はしばらく周りの景色を見回してた後、自分の手のひらを見つめると、

「あっ」

突然声を上げ、

「声が出る。話せる。俺は生きてる? それにさっきに人って母さんだよな?」

柊真はベッドから出て部屋の鏡を恐る恐るのぞき込むと、

「えっ、これって・・・。」

少しの間鏡に映った自分を見て導き出した結論は、

(俺はタイムスリープしたんだ。そして子供に、小学生? に戻ってるんだ。)


「おはよう。」

柊真は自室から母親らしき女性のいるダイニングへきて挨拶すると、その女性はキョトンとした目をして柊真を見ていた。

「どうかした?」

柊真は尋ねると、

「あなたが”おはよう”なんて言うの初めて聞いたよ。」

「別に、おはようぐらい。」

(そう言えば挨拶とかしなかったよな。大人になってするようになったんだ。)

「ごちそう様。」

母親らしき女性が柊真を見ている。柊真は逃げるように部屋に駆け込んだが、この後どうしたらいいのかわからず、

「今日は何曜日だっけ?」

部屋から顔を出して聞いていた。



 「行ってきます!」

柊馬は逃げるように家を飛び出していたが、さてこれからどうしたらいいのか全く考えておらず、というよりそんな急に今の現実に対応できるはずもなく、記憶を頼りに学校へと足を進めていくと、

「よう柊ちゃん!」

誰かに声をかけられた。柊馬は振り返り声の主の顔を見たのだが、

(???)

全く思い出せずに戸惑っていると、

「どうした?」

その男の子は不思議そうにして柊馬の顔を見ていたが、

(??? やばい全然思い出せない。こいつ誰だ?)

「おう、おはよう。」

ひきつった描いを作って柊馬は一応返事をすると、

(そうだ、名札が・・・。)

当時は個人情報などという概念はなく、自分の名前が書いてある名札を胸につけていて子供もいて、いろいろなところに個人情報が堂々と掲示されていた時代だったのだが、

北野明まつだあきら

「おう北野くん。おはよう。」

「えっ、どうした柊ちゃん。なんかよそよそしいぞ。」

「そうかな、ははは。」

「変なの? まあいいか、昨日野球見た。」

(そうだこの頃はプロ野球全盛期だ、夕食の時は必ずって言っていいほどプロ野球中継見てたな。)

「ごめん。昨日は見てないや。」

「そうか、柊ちゃん塾行ってるから見れなかったんだ。」

(そうか、俺は塾に通って・・・、うん確かに子供の頃一駅向こうの学習塾に通ってた。)

「そうだね。ははは。」

(おいおい学校着いたらこんなことがいっぱい起きるんだよな・・・。)


そんなことを考えながら歩いて行くと学校に到着し柊真は自分のバッグに書かれていた文字を確認して、

「よし5年4組だな。」

教室に入るが、自分の席がまでは思い出せるはずもなく、

(自分の席なんて聞けないな。)

教室のに入れないでいると、

「おーい、柊ちゃん。」

教室の奥から声が聞こえ、

(マツだ、あの顔は・・・)

そう柊真の親友だった松本昭まつもとあきらに間違いないと気づいた。 

「おう、マツ。」

そう言いながら近づいていくと、今度は別の少年から、

「柊ちゃん、おはよう。」

声が掛かり

(石ちゃんだ。石田達夫いしだたつおだ。)

石ちゃんも柊真の親友のひとりで、マツと3人でよく遊んでいた記憶が蘇ってきた。

「おはよう。」

石ちゃんに声を掛けながら、3人が集まりあの当時の光景が柊真の間の前に広がっていたが、急に会話に入れるはずもなく柊馬はもっぱら聞き役に回っていた。

 しばらくするとチャイムが鳴った。すると小柄な中年女性が教室に入ってきた。

篠原しのはら先生だ。確かに5年6年の担任だったな。)

呑気に想い出に慕ってると、

「佐々木君席に着きなさい。」

席につけずに立っていた柊馬は注意され、

(やばい、俺の席は?)

慌てて教室中を見回すと後方に誰も座っていない席を見つけ、

(あそこだ。俺の席は。)

急いでその席に向かおうとすると、

「こら、佐々木君どこに行くの? 早く座りなさい。」

篠原先生は教壇のすぐ前の席を指し、少し怒った感じで言っていた。

(俺の席ってあそこだっけ? この席じゃ他の生徒の顔が見えない。ひとりずつ顔を見ていけば思い出せるかもしれないのに。)

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