第4話 で、何から始めればいいのやら
三か月限定だが、俺は川勾さんと付き合うことになった。あの後すぐに連絡先を交換した。
そしてここから俺が女っぽく振る舞うスタートでもある。言葉使いも変えていければいいけど、それは徐々にかなぁ。それと川勾さんじゃなくて
……問題は学校や友だちの方だ。どんな目で見られるのか……。ちなみに両親は『いいんじゃない』とあっさり認めてくれてびっくりした。意外と理解のある親だった……いや、一人息子が女装したいって言って来たらもう少し抵抗があってもいいような気がするけど、うーん性転換するわけじゃないからなのかなぁ?よくわからないけど。
友だちは……大丈夫だと思うが、早いうちに打ち明けようとは思っている。なんせ俺には時間がないからだ。
取りあえず見えないところから少しずつやっていこう。毛の処理、肌の手入れ、髪の毛の手入れ、食事の管理……は母さんにお願いしよう。っていうか、ネットで『男・女装』で調べると驚くほど沢山の情報がでてきて、その情報の多さに俺は早くも頭を抱えた。
「翔ちゃん、良かったじゃない。メイク?まかせなさい。お姉ちゃんがちゃんと教えてあげる」
で、やっぱりというか、姉さんにお願いした。元々姉さんは小さい時の俺を人形のように着せ替えして遊んでいた人なので、すごくいい笑顔で引き受けてくれた。
「一本ずつ丁寧に少しずつよ」
「わかってるよ。つっ」
しかし……だ。眉毛の手入れ一つとってみても、めんどくさい。俺は鏡と姉さんとにらめっこしながらなんとか最初のメイクをし始めたけど、正直、世の中の女の人を心の底から尊敬する。姉さんは慣れればどうってことないのよ~とは言うけれど……。スキンケア、日焼け止め、化粧下地、コンシーラー、パウダーファンデーション、その後、必要に応じてポイントメイク。っていや、これマジでみんな毎日やってんの?
そうして悪戦苦闘を終え、最後にウィッグを装着して俺は鏡に向き合った。
「………」
鏡に映っているのは、栗色のふわふわな巻き毛でセミロングのウィッグを着けた女の子。に見えなくもない俺だった。一応パッと見は女の子に見える。初めてにしてはとてもいい出来だと思った。
「わ~かわいい~。お姉ちゃん弟の翔ちゃんも好きだけど妹の翔ちゃんも好きよ~」
未だに鏡とにらめっこをしている俺の横で、姉さんがそう言って俺を抱きしめた。
「ちょ、やめろよっ」
言いながら、姉さんを引きはがすがかわいいと言われて少し嬉しかった。あんなに苦労して可愛くないとか言われたらそりゃショックだわ。世の男性よ、もっと女性を褒めてあげないと。
しかし、はっきり言って化粧はすごい……。元々薄い顔の俺だからかも知れないがつけまつ毛とカラコン、アイラインで目が大きく見え、化粧で陰影をはっきりさせることで鼻筋がくっきりとし、そしてゆるふわの髪の毛がうまい具合に頬を隠して、可愛いと言うより、顎のラインがシャープなので綺麗系に見えなくもなかった。
「化粧ってすごいな……」
俺は改めて鏡の中の俺にそう呟いた。
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