第2話 それって、本気で言ってる?
家に帰ってすぐに部屋に引きこもった。初めての告白は見事に敗れた。というのに涙も出てこなかった。
「まさか……同性が好きだったとは」
世の中にはそんな問題を抱えている人がたくさんいるって知っていたが、どこかで自分には関係ないと思っていた。
でも川勾さんのことが嫌いになったかと言えばそうじゃなかった。変わらずに好きだった。同性愛者だと知ってなお好きだった。そんなことぐらいで嫌いになんてなれるわけがないんだ。
スマホをカバンから出して、写真ホルダーを開きいくつも保存されている写真データをスクロールする。見つけ出した目当ての写真をタップして画面に表示する。
写真には友だちと俺が教室の中でふざけている姿。そして、その後ろでそれをおかしそうに笑ってみている川勾さんが映っていた。教室でふざけて写メを撮った時に偶然撮れた一枚だった。
「……あ~ぁ、俺の恋も、ここまでか――」
そう思ったら、画面が滲んできて俺は少しだけ泣いた。
「翔、部屋にいるの?開けるわよ?」
ドアをノックする音と声で意識が浮上してくる。あれから何時間たったのかわからないが、部屋の中は真っ暗になっていた。そして、俺の返事も待たずに部屋のドアがゆっくりと開き、真っ暗な部屋に廊下から一筋の光が差しこんできた。俺は学校から帰ってきた格好のままでベットに横になり顔は壁側をむいていたが、ドアを開けたのは声で4つ上の姉だとわかった。
「翔、具合でも悪いの?お母さんが心配してたから、何かあったの?」
姉さんはベットに横になっている俺に声をかけながら。部屋の電気のスイッチを入れた。部屋が一気に明るくなり目が霞む。おっとりしていて優しい姉だが、今はほっといてほしかった。振られた男がただ泣いているだけなのだから。
まぁ当然そんな事情など姉さんが知っているわけもない。それに、今日の出来事は自分の胸にしまっておくには大きすぎて聞いてほしいのも事実だった。気づいたら声をだしていた。
「……今日、告白したんだ。女の子に」
俺の言葉を聞いて、姉さんは何も言わずに部屋に入ってくると静かにドアを閉め床に座った。
「でも、振られた。俺どうしてって聞いたんだ、嫌いなのかそれとも他に好きな奴がいるのかって……そしたら、違うって、そうじゃないって…………女の人が好きなんだってだから、男の俺は駄目なんだって……」
何だかまた、よくわからない涙が出てきそうになって俺は歯を食いしばった。
「そう……。それで、翔は……諦めてしまったの?」
それまで静かに聞いていた姉さんがそう言った。
「っ!どうにもできないじゃないか!女が好きだって言ってんのにっ」
思わずかっとなって俺はそう反論しながらがばっと身体を起こした。
「そこよ。その子は翔のことが嫌いっていったの?」
睨み付けた姉さんの顔は冷静そのもので、真剣な瞳をしていた。
「嫌い……とは言われてないけど」
その事で俺も少しだけ冷静になる。確かに川勾さんには嫌いとは言われていない……けど。
「なら、まだ可能性はあるわよ。その子が言っているのが外見だけの話ならね」
「外見……?」
「外見だけ女性っぽいのはどうなのかってこと。まだ確かめてはいないんでしょ?」
姉さんの言いたいことが分かって背中に嫌な汗が流れた。
「翔が女装すればチャンスもあるんじゃない?諦めるにはまだ早いわよ」
「!!女装!?」
俺は姉さんに対して、一種異様なものを見る目で見ていたかもしれない。
どうしたらそんな考えに行きつくんだ?川勾さんと付き合うために女装をする??俺にはそんな趣味はないぞ……でも、いやいや……でも……。
そこから、俺の長い自問自答の時間が続いた。
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