確かにそこにあった時間。夏希の言葉と共にそれらが輪郭を失うとき、天宮の情感を自らの記憶のように錯覚さえしていたこともまた自覚させられる。情感のくすぶるむこうに、はっきりと香りたっていた筈のものがくすみほどけていく。