第6話学園へ

ついに入学の日がやって来た。

入学したら、できるだけヒロインには近づかない。

それとヒロインに恋心を抱き、私に憎悪を抱く者。

殿下、隣国の第三王子、騎士団長の息子、大臣の息子、公爵家次男、この5人はヒロインに対する愛情が強かった分、憎悪も強かった。


「ミレーナ様、とてもお似合いです!」


「ありがとう」


制服なんて、何年ぶりだろう。

前の時は、親の職業のせいで大分苦労したからな。

今回は穏やかに過ごしたい。


「レーナ!凄く可愛いよ!」


「兄様、ありがとうございます」


──めんどくさいのが来たな。


「今日からレーナと一緒に、学園に通うことができるなんて、夢のようだよ」


「大袈裟ですね」


この世界の学園は、15歳から中等部、3年後18歳から高等部となるらしい。

わかりやすく言えば高校から入って、大学に行くようなものだ。


「いいかい、レーナ。悪い虫には気おつけるんだよ。特に殿下にはね」


殿下の呼び出しを受けた日、兄様に内緒で王宮に行ったのを根に持ってるらしい。


「分かっています。殿下には出来るだけ、近づかないようするつもりです」


「それならいいけど」


「さぁ、兄様行きましょう。式に遅れてしまいます」


「そうだね」



「さぁ、レーナ。ここが僕達が通う、ヴィンセント学園だよ」


馬車を下りると、目の前には立派な建物。


──ここが、小説の舞台……。


ここから始まる。

もう後には引けない。

願うなら、ヒロインとはクラスが別であって欲しいが、原作ではミレーナ、ヒロイン、公爵家次男が同じクラス。

兄様、殿下、隣国の第三王子は二つ上。

騎士団長の息子、大臣の息子が一つ上。

ヒロインと公爵家次男以外は、そんなに会うこともないだろう。


「レーナ。僕は先に行くけど、式の場所は分かるね?」


「はい。大丈夫です」


式まで時間があるな。少し探索してみるか。


「ん?」


裏庭か?多数の声がする。

こんな人気のないとこで、声がするのはあまりよろしくない。

しかも女の声がしてるとなると、ほってはおけないね。

気づかれないよう、近づくか。


「離してください!」


「俺らが式場まで連れてってやるって言っんだよ」


どこの世界にも、この手のもんがいるんだねぇ。


「その子、嫌がってるじゃありませんか」


「あん?なんだ?」


「嫌がる女性を無理やり連れていくのは、紳士とは言えませんね」


「俺は伯爵家の長男なんだ!その俺が連れて行ってやるって言ってるんだぞ!」


「あら?そうなんですの?……あっ!自己紹介が遅れました。私セルヴィロ侯・爵・家の長女ミレーナ・セルヴィロと申します」


おお。分かりやすく顔が真っ青になった。

さすが階級社会。

身分をかざすのは気が引けたが、口だけで収めるにはこれが一番だからな。


「……もしかして、セルヴィロ宰相の……?」


「あら?父をご存知ですか?」


更に顔が青くなってるぞ?

父様、私達の知らないところで何してるんだ?


「すみません!セルヴィロ家のご令嬢とは知らず!」


「いいえ、そちらのご令嬢にも、謝った方がよろしいんじゃないかしら?」


何が起こってるのか、分かっていない顔してるしな。


「フォンターナ嬢もすまなかった!俺たちはもう行くから!」


蜘蛛の子を散らすって、昔の人は上手いこと考えたもんだね。


「……あの、ありがとうございました。私カナリヤ・フォンターナと申します」


「はっ?」


──この子がヒロイン?

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