第3話兄の変化
「レーナ。父様の話なんだったの?」
自分の部屋に戻ろうとした所で、兄様に捕まった。
「私も8歳になったので、そろそろ婚約者をと。それで、第一王子殿下からお声がかかったみたいで」
「はっ?レーナはまだ8歳だよ?そんな子供に婚約者なんて、父様は何考えてるんだ!」
婚約者と聞いて兄様が、怒りを露にした。
ミレーナをこよなく愛する兄だ。婚約者が気に入らないんであろう。
「ええ。私もまだ早いと思います。ですから父様と話をして、私自身で婚約者を選ぶと、約束を取り付けてきました」
「レーナは婚約者なんていなくてもいいよ。ずっと僕のそばにいればいい」
「そう言う訳にもいきません。兄様は次期当主です。兄様が結婚すれば、私が邪魔になります」
──どの世界でも、小姑と一緒に住みたいと思う嫁はいるまい。
「僕は結婚するつもりは無いよ?もちろん、次期当主としてはちゃんとやるつもり。跡取りが欲しいなら養子をもらえばいい」
「はぁ?そんなこと父様が許すはずありませんよ!?」
確か原作では、兄様はちゃんと結婚していたはず。
しかしミレーナの嫁いびりのせいで、結婚生活は長く続かなかった。
離婚の原因になったミレーナに、兄様は怒ることはしなかった。
むしろ「レーナがセルヴィロ家のしきたりを教えてくれているのに、蔑ろにする嫁なんていらない」と、嫁の方を非難した。
──嫁を庇うどころか、非難するとは……。
「セルヴィロ家は僕とミレーナ、二人で守っていけばいい。他の人間なんて必要ないよ」
おかしなことを言い出した。
原作でもそれなりに、度の過ぎたシスコンだったが。
──これはシスコンなどというものではない。執着だ。
「兄様。私は兄様に幸せになって欲しいのです。私の存在が兄様の恋路を邪魔するようならば、私は屋敷を出ましょう」
どのみち兄様が結婚したら出ていく予定だ。
それが早まるだけ。
「何を言い出すんだ!?レーナが邪魔なわけないじゃないか!!」
「しかし、兄様が婚約に前向きでないのも確かです。それは私という存在が、邪魔をしているからでしょ?」
「………」
──ほら、何も言えない。
「とりあえず兄様は私ばかり構わず、次期当主として自分のあり方を考えてくださいね」
それだけ伝えると、私は自室へと戻った。
兄様の様子が原作とは違っていた。
これはいい方向に向いているか、悪い方向に向いているのかまだわからない。
少なくとも、原作は変えられるという事がわかった。
──それが分かっただけでも、首尾は上々だ
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