第21話 帰宅
さて、メイナード君にプレゼントも渡せたし、王都邸に帰ろうかな。
「メイナード様、私共はこれにて失礼いたします。」
「お帰りになられるのですか?カニウスの件では父上や母上、お爺様、お婆様からもお礼の言葉があると思うのですが。」
「いえいえ、カニウスについては
「・・・わかりました。しばらくは王都に?」
「どうでしょうか。まあ、気分次第というところですね。」
「そうですか・・・。では、門までお送りします。」
「いえ、こちらで結構です。カニウス、メイナード様の良き友となり、剣として盾としてお守りしろ。」
“承知しています。創造主。”
「それでは、メイナード様。」
そう言って、僕とカトリナ嬢はボウ・アンド・スクレープとカーテシーをそれぞれして王城を去る。ふう、メイナード君とのやり取りは楽しかったけど、やはりパーティは疲れるねぇ。身内だけのホームパーティのようなモノなら楽なんだけどな。
馬車に乗って少しだけ首の辺りを緩めて楽にする。
「はしたないだろうけど、許してね。」
「いえ、
カトリナ嬢は柔軟に物事を考えることができるからいいね。まあ、そのおかげか、この夏季休暇中の修練ではかなりの早さで教えた物事を自分のモノとしていっている。夏季休暇明けの定期考査では良い成績を残せるだろうね。
「そういえば、オーギュスト様。
「ん?ああ、メイナード様に差し上げたやつね。いいよ。まだ、何組かあったはず・・・。ああ、あった。はい、どうぞ。」
「ありがとうございます!!これで夏季休暇が終わってもオーギュスト様と簡単にやり取りができますわね。」
「なんのやり取りをするのさ。」
「それはもちろん、魔法についてですわ。文字だけよりも図解があった方が理解しやすいでしょう?
「素晴らしい向上心だよ。」
そう言いながら懐からスキットルを取り出してあおる。
「あら、不思議な形の容器ですね?この香りはお酒でしょうか?飲み足りなかったのですか?」
「1つ目の質問には、これは僕と使用人たちぐらいしか持っていないだろうから見たことがないことは当たり前だよ。と、答えておこう。2つ目は、その通り。酒精の強いのが入っているよ。3つ目は、まぁ、あれだよ。口内洗浄みたいなモノ。日常に戻るためのね。」
「そんな、王城で出されるお酒を汚いモノのようにおっしゃらないでくださいな。」
「ああ、いや、そんな気はなかったんだけどね。う~ん、この気持ちを言葉にするのは難しいなぁ。王城で出されるのは何というか、それこそ、国民が一生分の稼ぎで口にできるかどうかもわからないお酒が出るわけだ。それを何本も封を開けて、長時間空気にさらす。そして、残ったモノは恐らくは処分する。いや、僕が学生の頃に裏方の手伝いをしていた頃は捨てていたね。勿論、食事も。そんなところで酔った感覚を持ち帰りたくはなかったんだよ。これで、わかるかな?」
「ええ、理解できたつもりですわ。しかし、我が家とは違うのですね。」
「まあね。クレメントおじさんがそういう人なら寄子にはなっていないよ。いやぁ、でも、初めてのパーティーで余った物を持ち帰りたければ準備させるって言われたのはおじさんが初めてだったね。その時に
「お爺様はどのような事を言われたのでしょう?」
「“この場にある酒と食事は、我が領民が納めてくれた税によって準備できたモノだ。そして、生産者も我が国の民である。であるからして、1つたりとも無駄には出来ない。なので、持ち帰れるモノは是非とも持ち帰ってほしい。”とね。なんの飾りも無い言葉だったけど、農民の息子の僕にとっては嬉しかったなぁ。」
「お爺様らしいですわね。」
クスクスとカトリナ嬢が笑う。君もその血をついでいるんだよとは言えなかった。僕への執着が増しそうだからね。そんなことを考えていると、御者台からパオロが声をかけてくる。
「このまま、バチェフ侯爵邸ではなく王都邸でよろしかったでしょうか?」
「うん、お願い。」
「承知しました。」
早く帰ってゆっくりしたいからね。クレメントおじさんには、また明日にでも顔を出せば大丈夫だろう。
そして、王都邸に着き、食堂でゆっくりとワインと
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