第7話 元王女、直す・その2

 教会の内部を修復していきますわ。祭壇はそのままでということでしたので、参拝者の方が座る椅子や入口の扉などの建具、廊下などを加工魔法の不可視の腕で直していきます。その様子をイーヴァン司祭様はご覧になって驚かれているようですわね。


「これは・・・、魔法なのですか?」


「ええ、故郷の魔法ですわ。」


「なるほど・・・。」


「内部はこのような感じでよろしかったでしょうか?」


「ええ、大丈夫です。」


「では、残りもそのようにしますわ。外をとりかかる時にまた声をお掛けしますので、お仕事をされてください。」


「それでは、ご厚意に甘えさせていただきます。」


 さてさて、ドンドン進めていきますわよ!!魔法袋から材木を取り出しては、不可視の腕で修復していきます。楽しいですわ。


 内部の修復を2時間程度で終わらせてイーヴァン司祭様を呼びに行きます。


「どうでしょうか?」


「素晴らしいです。ありがとうございます。」


「それでは、今から外にとりかかりますわね。」


「なにか手伝えることは・・・。」


「大丈夫ですわ。ご安心なさって。」


 そう言って、外に出て風魔法を使いピョンと屋根にジャンプします。加工魔法で不可視の腕を出して屋根の修復をはじめます。加工魔法のおかげで初めてすることでも頭の中に手順がどんどん浮かび上がってきます。それに従い作業をするだけなのでとても簡単ですわね。


 屋根が終わると、次は外壁に外周の柵ですわね。リズムよく修復していきましょう。しかし、このような作業を王室育ちのわたくしができるか不安ではありましたが、何とかなるものですね。第3王女という立場を利用して、学園や王城で近衛兵に鍛えてもらったかいがありましたわ。


 そして、17時前には全ての作業が終わりましたわ。イーヴァン司祭様に確認していただくと、とても感謝をされました。わたくしは冒険者として依頼で来ていますので、完了のサインをいただき、冒険者ギルドへと向かいます。


 冒険者ギルドで完了届を出すために扉を開けて入ります。すると、中に居る冒険者達の視線が集まります。前回はお昼過ぎにイーヴァン司祭様と一緒でしたから気にはしませんでしたが、今回のこの視線は値踏みをするような視線ですね。少し不快ですわ。


 報酬をもらい宿へと帰ろうとすると、すでにルネとエヴラールが戻ってきましたわ。


「ブリュエット様、教会の修復は無事に終わりましたか?」


「ええ、大丈夫でしたわ。今度は冒険者として狩りに行きたいわ、エヴラール。」


「・・・そういうお約束でしたからね。もちろん、お連れいたします。」


「ありがとう、エヴラール。」


 そう言うやり取りをしていると、冒険者達は、「ルネ姐さんとエヴラール兄貴の連れか。」「エヴラールが傍にいるならアドバイスしなくても大丈夫そうだな。」「なんだ、ちゃんと自分の実力をわかっているじゃねぇか。お嬢様なのに感心だな。」等と言って私への視線を外しましたわ。なるほど、心配をしての視線だったのですね。心の中で謝罪します。


 さて、明日からはまた地道に服を作り、商業ギルドへと納品しなければなりませんね。しばらく納品しなくてもいいように多く作りましょう。もし、多く持ち込み足元を見られても売らなければ良いだけです。そのあとは冒険者として依頼をこなさなければなりませんね。


 だって、この世界で早く定住の地を見つけてオーギュスト卿をご招待しないといけませんものね。




 翌日の日曜日の朝、父さんと母さんと食後の時間を楽しんでいると扉がノックされたので、入室を許可する。入ってきた執事のパオロがとても申し訳なさそうに言う。


「オーギュスト様、来訪者がいらっしゃいました。1階の応接室にいらっしゃいます。」


 僕はため息をついて、


「来訪者の心当たりがある。すぐに戻るから2人ともゆっくりしていて。2人にはパオロがついていてよ。ケネスは着いてきて。」


 執事長のケネスを伴って1階の応接室に入る。ジェナが面倒を見ていてくれたようだ。帯剣した男が5人、ソファに座ってぐったりしている。


「食後の時間をよくも壊してくれたね。僕が屋敷の主人、オーギュスト・ユベールだ。伯爵位を賜わっている。君たちは、招かれもしないのに人の屋敷に勝手にやってきて、そんな恰好をしているけど、僕より高位なんだろうね?そうじゃなければ不敬で首を刎ねるよ?」


 そう言うと、1人の男が立ちあがり、


「我々は元首の特命で動いている。」


「ふ~ん、証拠は?どこの国?」


「・・・言えん。」


「はぁ?自己紹介もできないの?まぁいいや。僕だって暇じゃない。用件を聞くから手短に。」


「男が1人と女が2人来たはずだ。身柄を差し出してもらいたい。」


「そんな人達、来てないよ。はい、おしまい。出て行って。」


「ならん、屋敷の中を探させてもらう。」


「何の権限があってそんなことを言うのかな?君に命を下した元首に抗議するから、国名を早く教えて立ち去ってくれ。」


「ならば・・・。」


 男がそう言うと残りの4人の男と共に剣を抜いた。僕は呆れながらケネスに言う。


「肩と足だよケネス。」


「はい。」


 “ダンダンッ!!”という音が20回響く。ケネスの手に握られたグロックから放たれた銃弾は的確に男たちの両肩と両膝を砕いた。痛みに声を上げ床に崩れ落ちる男たち。流石は元NAVY SEALs。正確無比だね。


「くそっ!!なんなんだそれは!?」


「手の内を教えるほど僕は馬鹿じゃないよ。ケネス、13番目の扉に放り投げといて。」


「承知しました。」


 そのまま僕は父さん達のいる2階の応接室に戻る。


「大丈夫だった?」


「大丈夫だよ。母さん。人探しだったみたいだからお引き取りを願ったよ。」


「それならいいのよ。下からなにも物音がしなかったからね。」


 風魔法で防音壁を1階と2階の間に展開しているからね。男たちの処理が終わったら解除しよう。パオロに追加の茶菓子とブランデーを頼む。


「あら、オーギュスト、また紅茶にブランデーを入れるの?」


「うん、ちょっと嫌な感じの人達だったからね。少しだけだよ。父さんみたいに飲みすぎたりはしないよ。」


 そう言いながらパオロからブランデーの瓶を受け取り中身を紅茶にティースプーン一杯分をたらす。香りを楽しみながら母さんと父さんとの話しも楽しむ。


 そうしていると扉をノックされる。入室許可を出すとケネスが入ってきた。


「オーギュスト様、来訪者の方々には還っていただきました。」


「それはよかった。ケネスもパオロも休んでいていいよ。用があれば呼ぶから。」


 そう言うと、2人とも頭を下げて退室していく。これで、あの元お姫様に関する厄介事は終わりかな。そうだといいね。そして、父さんと母さんが帰るまで何事も無く日曜日が終わった。あの男たち?ああ、ちゃんと還してあげたよ。今頃は魂になっているんじゃないかな?ま、もう終わったことだよ。

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