第170話 閑話─修羅場を目撃




凄いものを目撃してしまった………



『 皇子様のベンチ 』


庶民棟で料理クラブのある日は、皇子様は必ずここに座ってリティエラ様をお待ちしているのだ。



並木道を、二人で仲良く手を繋いで歩く様は

美男美女カップルであるが故に、凄く絵になる光景で、生徒達にとっては何時しか二人は学園公認の恋人同士になっていた。


皇子様と公爵令嬢のイチャイチャを見れたら幸せが訪れる………

そんな話まで出ていた程である。



お二人の邪魔をしない様に……

草むらから、木の影から、岩の間から、二人の姿を見ようと生徒達が、ワクワクドキドキしながら眺めるのが常となっていたのである。



この日は翌日から長期休暇となるので、二人を見ようとするギャラリーは特に多かった。



皇子様がやって来てベンチに座ると、後ろから王女が駆け寄って来た。


─こいつ……何処から湧いて来たのか─

─うそっ!……皇子様の横に座った─



二人が何やら話してる………

すると……

リティエラ様が出て来られた………



駆け出すリティエラ様を追い掛ける皇子様……を、追い掛ける王女………



三つどもえだ………

皇子様と公爵令嬢と王女の修羅場だ!

ギャラリーは一気に熱をおびた。




皇子様が「 違うんだ 」

……と叫ぶ声が聞こえた。



再びリティエラ様が駆け出し、皇子様が追い掛ける………



そして………

リティエラ様に追い付くと

なんと………皇子様はリティエラ様にキスをしたのだ……



皆が、キャーっとピンクの声が出そうになったが、慌てて口を押さえた。

ギャラリー皆が、地面にひれ伏し、口を押さえていた。


─ここで、存在感を出してはいけない─

─我々は影だ、草だ、石ころになるんだ─


馬車に乗って去って行ったリティエラ様を、追い掛けて行ったのであろうか………

皇子様が、皇太子殿下専用馬車の方に向かって走って行かれた。




どうか……

どうか……

お二人の恋が実ります様に……

皆が祈るような気持ちだった。




そして……

その修羅場の出来事は、翌日には全学園生徒に広まった。

学園は長期休暇に入ったばかりで、休みにも関わらず瞬く間に広まったのだ。

生徒達の伝達能力は凄かった。



だから………

皇太子殿下と王女の婚姻の話が国中に広がっても、学園の生徒達は信じなかった。



あの時………

皇子様とリティエラ様のキスシーンを見て呆然とし、ひとり取り残された王女に



─王女、ざまあ!─



……と、皆が思ったのだから………






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