第127話 不憫な皇子様




レオナルドがレティの初恋の人?


アルベルトは

鈍器で頭を殴られた様な衝撃を受けていた。





「 殿下、あの男は誰なんでしょうか? 」


執務室で公務の休憩中に、侍女から出されたお茶を飲みながらクラウドが言った。


クラウドも、港で、赤い髪の男に向かって叫ぶレティを見ていた。


「 貴方は誰なの? 」



そう叫ぶレティは普通じゃなかった………



「 どうやらレオナルドと、その人を探してるらしいよ 」

アルベルトは顔も上げずに、書類にペンを走らせる。



「 ?、何故レオナルドと? 」



「 レオナルドがレティの初恋の人なんだって 」



「 ?、何故リティエラ嬢の初恋の人と、人探しが一緒になるのですか? 」


「 レティが小さい頃、レオナルドに大好きだと言ってたんだよ 」

「 お小さい頃の話でしょ? 」



殿下はリティエラ嬢の、小さい頃の初恋に焼きもちを焼かれているんだと、クラウドは笑いが出た。



「 笑うな!クラウド! 」

「 失礼しました、でも、リティエラ嬢は殿下をお好きなんでしょ? 」

「 まだ、返事を貰ってない 」

「 えっ!? 殿下はクリスマスに告白をなさったんですよね? 」



「 そうだよ、だけどまだレティから返事をして貰え無いんだ 」

そうポツリと言って、アルベルトは項垂れる………



「 レオナルドには、好きと言い、俺には言わないんだよ!あの娘は………」



エドガーが言うには

レオナルドは姉ちゃんがいたからか、女の子の扱いが上手く、レティの喜ぶ事ばかりしてあげていたそうな……


ラウルは、俺の次に、レオナルドが好きだと言っていたから、 一番は俺だと自慢していた。


たまに会う妹が可愛くて仕方無かった様で、今でも、この兄妹の仲の良さは羨ましくもあるアルベルトだった。





いや、殿下………お小さい頃の話でしょ?………と慰めはするが………


しかし、この殿下を、翻弄するなんて………

リティエラ嬢は小悪魔か?


誰もが、称賛し、憧れ、欲する我が国の皇太子殿下をここまで手こずらせるとは……



一途な皇子様を少し不憫に思うクラウドだった。



「 殿下、きっとリティエラ嬢も殿下をお好きですよ 」

クラウドの目から見ても、リティエラ嬢は殿下を好きなのは確かだ………



きっと

ルーカス宰相のお考え通りに、16歳になるまでは、殿下の申し出を受け無いのでは?

……と、クラウドはアルベルトに言った。



「 うん……」

アルベルトは、レティから貰った万年筆にキスをした。

俺だけが好きすぎるんだよね………



万年筆はずっと、肌身離さずに持っている。

レティがくれた物は、万年筆でさえ愛しくて愛しくて仕方ない、レティにベタ惚れの皇子様なのである。





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