第125話 未来の女




赤い髪に金色の瞳………

何処かで見たことがあるのは確かだ………




翌日、レティは2つの用件で街に出ていた。



1つ目は、港の乗船券売場に行って、乗船名簿を見せて貰う事だ。


昨日、赤のローブの爺ちゃん達が向かった先は、ローランド王国。


アルベルトやラウル達が留学していた国だ。

シルフィード帝国に一番近くにある隣国で、友好国である。


乗船名簿を見せて貰い、赤い髪に金色の瞳の男と似た年齢の人をピックアップして、メモをして行った。



ジャック・ハルビン………



ハルビン?



聞き覚えのある名前だった。

もやもやする物を抱えながら、乗船券売場を後にした。





街に来たもう1つの理由は、不動産の売買。

レティは自分の店を出したいので、店を探していたのである。


レティが目を付けた不動産がある。

それは、広場から少し離れた場所にあるが、角地の店で、レティの理想の場所であった。



『 売り店 』


よし、まだこの張り紙がある。



この時代には、不動産会社などは無く、売り主と買い主が直接交渉して、売買の成立となるのだ。


ただ、レティはまだ15歳で成人では無いために、売買契約をする事は出来なかったのだ。



だけど………

どうしても、この場所が欲しい。

よし、交渉だけでもして、契約は16歳になってからにして貰おう!



レティは、店のドアを開けた。


「 こんにちは、店を売って欲しいのですが…… 」




まだ可愛らしい少女が現れて、店主達はびっくりしていた。




お店は、元はパン屋さんだった。

老夫婦が営んでおり、2年前に旦那さんが病気をしてからずっと店は閉めていた。


2階が住居だったが、遠くに住む息子さん家族から、同居を言われ、思い入れのあった店だったが、手放す事にしたらしい。



レティは、自分の夢であるブランド店を出す事や、将来的には海外に進出する旨を伝えた。



そして………

気になるのは旦那さんの病気だった。


聞けば、最近は病院には行って無いらしい。

最初は通っていたが、医療費が高く、治らない病だとして病院通いを諦めたそうだ。



レティは医師だった。

旦那さんの容態を聞き、診断書と薬の処方を作成した。

これを持って、もう一度庶民病院まで行くようにとお願いした。


「 私は、医師では、ありませんが、医療の勉強をしました 、どうか医療を信じて下さい 」



医療費が高いのは知っていた。

医師だった頃、庶民病院に移ってからは、貧しい者達からは、治療費を貰わない事もあったのだった。



それでもまだ医師がいる皇都は良い方だ。

医師が居る地方は少ない。


それを何とかしたいと、レティは医師だった頃に常に思っていた。

しかし、志し半ばで死んでしまったのである。




そして

この時のレティの処方箋は、実はまだこの時期には無く、4年後に、新たに開発された物だったのだ。



これにより、また、レティの周りが騒がしくなる事になる。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る