第107話 閑話─魔除け
アルベルト皇子は
学園に入学するのを楽しみにしていた。
昔も今も皇宮には子供は一人である。
それが当たり前の日常だったから寂しくは無い。
ラウル達も頻繁に遊びに来てくれたし、小さい頃は勉強や護身術も彼等と一緒に習っていた。
しかし、皆が居なくなればやはり一人だった。
一人の時は、1日の大半を皇立図書館で本を読んで過ごした。
10歳になり剣術を本格的に習い、毎日騎士団の訓練に参加する様になっても退屈な毎日だった。
特に母である皇后のお茶会への出席は、幼い頃から苦手だった。
それでも、自分が行くと、母や大人達が喜んでくれるので、母から誘われれば断る事は無かった。
学園に入れば、退屈な毎日から解放される………
そんな期待を持って学園生活が始まった。
しかし、実際は新たな苦難が待ち受けていた。
皇子様の御入学。
これは、貴族だけでなく、庶民棟の者達までいきり立たせた。
アルベルト皇子は15歳だった。
類い稀なる美しさを持った皇子様に、女生徒達は群がった。
毎日、毎日、廊下に群れる女性徒達。
2年生から4年生のお姉さま達のマウントの取り合い。
同級生であっても、同じクラスでも例外では無かった。
アルベルトはどんどん心が荒んでいった。
これなら、皇宮で本を読んで過ごす方がマシだ。
学園生活は、こんなにもつまらない物だったのか………
それ故に、留学の話に飛び付いたのだった。
本来ならば半年程度の留学だったが、無理矢理1年にして貰った。
まあ、留学先の学校でも似たようなものだったが………
それでも
街に出れば、他国の皇子の顔なんか知られていないので、ラウル達と自由に遊べる事で、かなりの気晴らしになっていた。
そうして3学年になる前に帰国した。
また、つまらない毎日が始まるのかと思うと憂鬱だった。
しかし、リティエラ・ラ・ウォリウォールに出会ったのだ。
彼女と親しくする様になると、今までの様な群がる女生徒はいなくなった。
そう、彼女は我が国の、筆頭貴族である公爵令嬢だった。
身分制度の色濃い時代では、誰も彼女には立ち向かえ無いのである。
レティは
知らない間に
皇子様の魔除けをしていたのだった。
今では
学園公認の仲になっている二人だが………
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