第75話 冒険者パーティー、武器屋に行く
兄のラウルとレオナルドも武器屋に行く事になった。
「 騎士、アーチャー、賢者が馬車を降り、『レティと愉快な仲間達』は出発した 」
エ「 何だよ、その弱そうな名前は……」
レ「今、思い付いたのよ 」
レ「 それより、お兄様が賢者っておかしくない? 私より成績が悪いのに 」
ラ「 賢者は頭だけじゃないんだ、策士かどうかだよ 」
エ「 それより、何で、縦歩きなんだ? 」
レ「 冒険者は縦歩きに決まってるのよ 」
「 旅の途中で旅の芸人が仲間になった 」
レオ「 おい、何で俺が芸人なんだよ 」
レ「 チャラいから 」
レオナルドがこっちを見ている女の子達に手をヒラヒラと振る。
キャーっ、女の子達がキャラキャラしてる。
「 道中、チャラい旅の芸人は女の子達に手を振った 」
レティのナレーションが入る。
レオ「 で………旅芸人の武器は何だよ? 」
レ「 ギャグよ、敵はゲラゲラ笑ってる………で戦意喪失させるの 」
エ、ラ「 ギャハハはは、ギャグ…………」
2人は笑い転げる。
レ「 駄目だわ、仲間も戦意喪失してるわ 」
レオ「 レティ、もっと格好良いのにしてよ 」
レティと愉快な仲間達はテクテクと歩いて行く………
兄達は、楽しんでレティの可愛い遊びに付き合っていた。
ラ「 ここに魔法使いがいれば完璧だな 」
レ「 殿下ね 」
エ、レオ「 レティ、お前アルの魔法を見たんだよな 」
レ「 雷が落ちたわ 」
ラ「 皇子で魔法使いだなんて………むしろ魔王だな魔王 」
ア「 何で俺が魔王なんだよ 」
一同が止まって声の方を見る。
紺のジャケットに共布で作った帽子を深く被り、貴族風に装ったアルベルトが前にいた。
長らく待っていたのだろうか………遠目に人だかりができていた。
どんなに変装をしようが、長身の美丈夫のオーラは隠しようがない。
「 遅かったな 」と言いながらレティに近寄って来た。
レ「 あっ……エド! 殿下には内緒にして言ったじゃない 」
ア「 そんな悪い事を言うのはこの口か!」
レ「 ごえんにゃしゃい 」
殿下に頬っぺを摘ままれた。
レ「 殿下、後ろに並んで下さい 」
ア「 で、何で縦に歩いてるんだ? 」
レ「 冒険者は縦に並ぶのよ 」
ラウルが、スマンと両手を合わせ、付き合ってやってと、眉を下げて目配せをしてくる。
アルベルトもクックッと笑いながらレティの言うとおりにする。
ラウル達3人は小さい頃から、たまに会うレティとこうして遊んでいたのだった。
「 旅の途中で、魔王が『レティと愉快な仲間達』に加わった 」
レティのナレーションで一行は歩き出した。
アルベルトは笑いが止まらない。
ラ「 魔王が味方にいるなら、何と戦うんだ? 」
リ「 敵は………ガーゴイル 」
エ、ラ、レオ、ア「 ガーゴイル?! 」
レオ「 ガーゴイルにギャグは通じないだろ? 」
皆は、レティの妄想力に笑った。
私の妄想であれば良いのにね………
レティの過去であり、未来に起こるかも知れない魔獣襲撃にレティは震えた………
エ「 着いたぞ 」
「 冒険者パーティーは武器屋に着いた 」
レティのナレーションで、レティの可愛い遊びが終わった。
やりきったわ………レティは満足していた。
最近、『魔法使いと拷問部屋』を読んで、これをやってみたかったのだった。
「 邪魔するぞ 」 とエドガーが言うと
「 いらっしゃいませ坊っちゃん 」
………坊っちゃん………
「 小さい頃から来てるからな 」
エドガーが照れくさそうに頭を掻いた。
エドガーは騎士の家系である。
「 先程までグレイ坊っちゃんがいらしてましたよ 」
アルベルトは血の気が引いた。
ニアミスだ。
レティをみたら
キラキラした瞳で剣を手に取っていた。
店主の声は聞こえて無かったようでホッとする。
レティは剣を抜いて構えた。
周りが静かにレティを見ている。
綺麗な構えだ。
剣を鞘におさめる。
真剣を扱うのは学園を卒業し、騎士養成学校に入ってからだ。
だけど、彼女が剣の扱いに慣れている事は分かった。
この小さな娘は………何処で剣を習ったのか………
次は、弓矢のある所に彼女はいた。
弓を手に取っている。
足を開き、姿勢をただし、矢を引き、弓を構える。
綺麗な立ち姿に皆が見惚れる………
やはり、慣れてる…………
「 レティ、剣も弓も何処で習った? 」
ラウルも知らないのか、驚いて聞く。
「 ある人にね、後は内緒、聞いても教えない 」
グレイだ。
アルベルトは咄嗟にそう思った。
ラウルも知らない所で二人は会っていたのか………
嫉妬で気が狂いそうになる…………
ここで会ったらどうなっていたのだろうか………
******
私は弓矢の一式を購入した。
公爵家に送って貰う事にした。
よし、これを錬金術師に渡せば………
あっ………ヤバい、殿下がこっちを見てる………
「 レティ、僕に内緒にするのは後ろめたい事があるからだよね 」
「 …………… 」
「 虎の穴で、話をしようね 」
うわっ、怒ってる、怒ってる………
私達は武器屋を後にした。
改めてメンバーを見ると
皆、凄い美形だわ………
街の皆がキャアキャア騒いでる。
学園では見慣れた4人だけども………
殿下がいることもあり、街の騒ぎが大きくならないうちに退散する事にした。
兄が「うちに来るか?」………と言って
御一行様は我が家に来る事になった。
殿下は護衛騎士を呼び、何かを告げた後、護衛騎士は何処かへ立ち去った。
多分、我が家と皇宮に知らせに行ったのだろう。
皇族の不自由さを改めて認識した。
そうしてレティと愉快な仲間達は公爵家に旅立った。
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