第71話 好きの気持ちを全開に
虎の穴
建国祭があったり、学園祭があったりで
本日2回目の訪問だ。
受付で名前を言って、名札を貰い、白のローブを着用する。
今日は皇立図書館で朝から薬草について調べている。
私は、2度目の人生で医者を目指して勉強をしていたので
薬草の効能は頭に入っている。
しかし、今は、与えられた薬草を治療に使う行為では無くて、新たな特効薬を作る側の、薬師としての研究をしたいのだ。
図書館で本を読みあさっていたら
「 ねえ、君と殿下の関係は? 」
顔を上げたらルーピン所長が、私の顔を覗き込むように見ていた。
「 うわっ 」
近い!! 慌てて仰け反った。
この人は何気に人と人の距離間が近い。
「 殿下と私の関係ですか? 」
う~ん………
「 殿下の友達の妹………ですかね 」
「 じゃあ、君は殿下をどう思っているの? 」
ルーピン所長がしつこい。
………基本、私の人生4度目の片想い相手なんですけど………
ええ、そうなんです、永遠の片想いなんです…………シクシク
そんな事言えないし………
勿論、恋人なんかじゃ無いし、友達なんて言ったら変だし……
う~ん………
「 兄のお友達……それ以上でもそれ以下でも無いわ 」
私は自分に言い聞かせる様に言い切った。
「 ふ~ん……… 」
ルーピンは押し黙った。
もう、そんな事を聞いてどうするのだ?
大した用が無いなら何処かへ行って欲しい。
今、良いとこだったのに………
すると、彼が手にしている短い杖が目に入った。
「 ルーピン所長、それ、魔法使いの杖ですか? 」
キャーっ!と尻尾がパタパタとなった。
杖を待ってるけど、これは魔力を集中させやすくする為だけの物らしい。
ここでの魔法使いは、魔力使いの事である。
ポンポン色んな物を出したり、箒に乗って空を飛んだりする様な、そんな魔法使いでは無く、魔力があるという1点のみである。
魔力には人によって属性があり
光、雷、水、火、風、の5種類があると言う。
ルーピン所長は水だ。
「 じゃあ、干ばつの時には雨の代わりに水を降らせる事が出きますの? 」
「 いや、そこまでの威力は無いけど、火事の時に家一件の火を消す位なら出きるね 」
ルーピン所長はそう言って胸を張る。
「 だったらこんな所で所長なんかしてないで、街の消防団に入団して役に立てる事をするべきよ 」
ルーピンは固まった。
そこにクックッと笑いながらアルベルト殿下がやって来た。
「 お早う、レティ 」
「 お早うございます 」
立ち上がってお辞儀をした。
殿下はじっと私を見る。
「 じゃあね、また後で……… 」
殿下はそう言って私の頬に手をあてた…………
「 ルーピン、魔力調節をしたい 」
殿下はそう言うと、固まったままのルーピン所長の腕を取り、引っ張って行った。
殿下の後ろ姿を呆然として見ていると、耳が少し赤くなっていた。
何?、何?、今のは何なの?
今度は私が真っ赤になって固まった。
騎士団での練習の後なのか……
殿下はシャボンの香りがした。
*********
アルベルトは少し前に図書館に来ていた。
「 じゃあ、君は殿下をどう思っているの? 」
と言うルーピンの声が聞こえて、本棚の物影に身を潜めた。
レティはなんと答えるんだろうか…………
ドキドキドキドキ
「 兄のお友達……それ以上でもそれ以下でも無いわ 」
アルベルトはここでしばし固まってしまった。
違う、俺は君が好きなんだよ………
少しは伝わってるものと期待してたのに、全然伝わって無かった…………
駄目だ、もっと積極的に『好き』をアプローチしなきゃ………
グレイがレティと出会う前に………
レティが騎士団に入るなら、いずれは2人は会うことになる。
レティがあんな目をしてグレイを見つめたら、グレイなんかイチコロで彼女に落ちてしまう。
駄目だ、駄目だ。
それまでにレティを落とさなきゃ………
俺を好きになって貰いたい。
煩いクラウドの言う『自重』するのを止めて、好きの気持ちを押さえずにいこうとしたら
目の前にいる、可愛すぎる白の魔女の頬に触れてしまっていた…………
いきなり頬を触られて彼女はどう思っただろうか?
嫌われたらどうしょうかと
ちょっぴり後悔したアルベルトだった………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます