第61話 皇子、幻滅される




「 なんですって?!」

「 アルベルトが他家のメイドと、イチャイチャしていたですって?」



「 アルベルトの想い人は公爵令嬢では無いのですか? 」



そしてそのメイドは、家族の為に宮殿の料理を持って帰る程の貧しいメイドだったと聞いて皇后は驚愕した。



アルベルトは一体何をやってるの?





皇后は他国の王女だった。

皇帝が皇太子時代にシルフィード帝国に嫁いできた。

長らく子が出来ず、やっと出来た子は難産で、次の子は望めないかも知れないと言われた。


そんな一粒種の皇子を慈しみ、皇太子妃はこの時代には珍しく乳母をつけないで自分の乳で皇子を育てた。


皇太子に、もう子を産めない事を泣いて詫び、側室を進めた。

法律では一夫一妻制の国だが、皇族だけは特別に側室制を認められていた。


だけど、政略結婚でも皇太子は妃を愛し、側室をとる事も無く、3人で仲睦ましく同じ部屋でアルベルトが5歳の時まで過ごした。


5歳から帝王学を学ぶ為にアルベルトは別室に移ったが

父は宮殿から皇都を見下ろしながら、アルベルトを抱き上げ、この国の未来や皇帝になる覚悟を教えたのである。



そんな両親から育てられたアルベルト皇子は

真っ直ぐに素直で優しい子に育った。




そんな優しいアルベルトが母親である皇后に激怒したのである。

それが令嬢達とのデート作戦だった。



皇后は直ぐにクラウドを呼び、真相を聞いた。

「 殿下の想い人はウォリウォール宰相のご令嬢です 」

「ルーカスの?」


何の問題も無いじゃないの?

何故、婚約だけでもしないの?


実は、皇后も周りの皇太子への求婚要求に些かうんざりしていたのだった。

重臣達からも、せめて婚約だけでもと絶えず進言されていた。



クラウドは、自分の娘を16歳までは公に出したくないと言う宰相の思いを説明した。



「 そう……… 」

「 はい、それに殿下がかなり苦戦をしております 」

「 苦戦?アルベルトが? 」

「 はい、リティエラ嬢は、その……一筋縄ではいかないお方みたいで…… 」



あの、誰もを魅了する、完璧無敵皇子が苦戦を強いられてるですと?



アルベルトは天才であった。

何でもそつなくこなし、そして、それ以上の功績を出せるのだ。


苦労と言う言葉は彼には無かった。

だからか、アルベルトは何時も覚めていた。

たぐいまれなる美貌の様相は誰をもを魅了させ、何時も褒め称えられた。


だけど………

大人になっていくにつれ、アルベルトの表情は作られたものとなっていた。



そのアルベルトが苦戦をしているですって…………



「おもしろい」



皇后はクラウドに逐一報告する様に命じた。




「アルは、恋だけは思うようにいかないみたいじゃぞ、のう、ルーカス」

皇帝が目を細め楽しげに言った。


ルーカス宰相は苦笑いをした。


「アルがそちの娘を落とせるか見物じゃのう」

皇帝がいたずらをする様に笑った。




そうして皇宮による『皇子の恋を応援する』包囲網がしかれた。



そんな中での

他家のメイドと軽食ルームでイチャイチャしていたと言う皇子の噂は瞬く間に宮殿に広がった。



「皇子様ってそんなに節操が無かったの?」

「想い人がおられるのに、寄りにも寄って他家のメイドに手を出すなんて………」

「私達の皇子様は大人になられて変わってしまわれた……」



皇子様大好き侍女や女官達スタッフ達が、チョッピリ幻滅したのは言うまでもない。








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