第62話 亜麻色の髪の少女




「うそだろ?!」



レティがいる…………




その日は

イニエスタの王女との約束をしたとおりに、狩に来ていた。

他国の2人の姉妹の王女達は狩は苦手だと言い参加しなかったが、他の令嬢達は皆参加していた。



場所は皇族の狩場だから警備の上でも安心なのだが、急な開催とあって皇宮騎士団が警備にあたった。

王女や令嬢達は馬車に乗り、アルベルトは愛馬の白馬に乗った。




その帰りに牧場に立ち寄ったら

そこにレティが居たのだ。



彼女は冊越しに馬を眺めていた。


ガヤガヤと騒がしくなり、

彼女はこちらに気付き、アルベルト達を見て驚いている様だった。



遠くから深々と

モスピンクのドレスの裾を持ち、カーテシーをした。



亜麻色の髪が夕日に輝き、それはそれは優雅で綺麗なカーテシーだった。



その時、馬車から下りてきていた、アリアドネ王女がアルベルトの腕に指を絡ませてきた。


他の令嬢達も馬車から下り周りに集まった。



亜麻色の髪の少女は

その時に、何かに気付き、その何かを目で追った。

そして、ハッとし、口元を両手で塞いだ。

暫く、そのままで立ち竦んでいた。



アルベルトは彼女が見詰めてるその何かに目をやると………



グレイが居た。

グレイが部下に指示を出し、熱心な警備をしていた。

皇宮騎士団第1部隊第1班の班長 グレイ・ラ・ドゥルグ……



馬上のグレイは夕日を浴びて輝いていた。





アルベルトは血の気が引いた。

やっぱり、レティとグレイには何かある…………




それよりも

女に囲まれ、腕を組まれ、ベタベタされている自分が情けなくなった。


それを

誰よりも好きで、何よりも大切な人に見られたのだ。



ニコニコと愛想笑いをし、くだらない話に付き合う………

これが仕事だといえ

騎士として馬上で真剣に警備をしているグレイとは雲泥の差だった………





秋風が

レティの前髪をふわりとかき分けた。

可愛らしいオデコを覗かせた顔は

まだ15歳のあどけなさの残る少女だった。



この15歳の少女が

女に囲まれた自分を見て、どう思うのか…………




「 どなたですの? 」

アリアドネ王女が目を細め、訝しげに聞いてきた。

他の令嬢達も、口々に亜麻色の髪の少女の名を聞きたがった。



胸を押し付け俺の腕に指を絡ませているこの女や、胸元を協調した場違いなドレスを着ていたこの女達には

レティの名を言いたくは無かった。



「 行こう、もう日が暮れる 」




レティはずっとグレイを目で追い続け

アルベルトを見る事は無かった………




俺は………格好悪すぎる…………



アルベルトは唇を噛み締めた。








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