第22話 募る想い



彼女が来る

彼女に会える




夕食会への招待客は 厳選された15歳から19歳までの10名の高位貴族の令嬢達で

未成年者も来ると言う事もあって母親同伴の夕食会だった。


夏だと言う事もあり 夕食会と言っても軽食のパーティーであった。



「 皇子様? 今日の夕食会は何か特別なものなのですか? 」


アルベルトの夕食会の衣装の仕度をしながら侍女が質問をした。


彼女は侍女長のモニカ

皇子が生まれた時から世話をしている大ベテランだ。


その他にはノーラを筆頭に、10人の侍女達が交代でアルベルト皇子の世話をしている。


何時でも柔らかく人当たりの良いアルベルト皇子は、 侍女長を困らせる事は無かったのだが………

最近の皇后主催のお見合いお茶会や、お見合い夕食会に

アルベルト皇子が難色を示しているのは明らかだった。


モニカが仕えて来た今までの中でも、この機嫌の良さは初めてだった。



「 そうだね、特別かな……… 」

皇子はなんともトロケそうな顔をして答えたのだった。




クラウドとともに皇后の部屋の前に…………



レティに会える

レティはもう宮殿に着いたかな?



皇后の護衛が

「皇太子殿下のおなりでございます」と告げる。 「どうぞ、お入り」

「母上、お迎えに上がりました」


お迎えに来たですと?

皇后は、アルベルトのテンションの高さにぎょっとした。



何時もは渋々なのにこれはどう言う事かしら?


後ろで側近のクラウド・ラ・アグラスが笑いを堪えていた。



レティは俺の顔を見たらどんな顔をするかな?

そうだな……

今日は絶対にアルと呼ばせるぞ。




夕食会は小ホールで行われた。

小ホールと言ってもかなりの広さがあって

豪華なシャンデリアに大きな窓

窓を開け放つと広いテラスの横は庭園に面していた。



「皇后陛下と皇太子殿下のご入場です」

集まっていたお貴族様達が一斉に頭を垂れた。




「皆様、お集まり有り難う」

「今宵は気楽に歓談して下さい」

夕食会が始まった。



皆が先を争ってアルベルトの周りに集まる。



各々が名前を告げ

うっとりと頬を染め見つめる者や、やたらと娘自慢をしてくる親達。


晩餐会でも無いのに豪華な衣装で

上目遣いで目線を合わせ様とする者もいた。




あれ?

どこだ?

どこにレティがいる?




クラウドが殿下を見ていたら

令嬢達とにこやかに会話をしながらも誰かを探している様だった。



もしかして居ないのか?

まだ来ていないのか?



令嬢達の人数を確認したら1人足りなかった。



クラウドは青ざめた………

虚しい時間だけが過ぎていく




「アル様!」

突然甲高い声でアルベルトに駆け寄る令嬢がいた。



呼んで貰いたい人には呼んで貰えずに

こんな奴に呼ばれるとは………



でも、流石に これは不敬だとクラウドは注意した。 皇后からも一言あった。


親は

「まだ15歳で、成人もしていない娘なのでどうかお許しを………」

………と娘に可愛さアピールをする様に促した。


「えへ………ご・め・ん・なさい」

彼女は自分の頭をコツンと叩いた。




レティと同じ15歳………

そう言えば

レティを宮殿で見たのは

あの立太子の礼の時のバルコニーの上からだったな………



不思議と彼女が居るのは直ぐにわかった。

じっと見ていると、彼女は僕の視線に気付いた様だった。



すると僕に向かって元気良く両手を上げ、ハートマークを突き上げてたっけ……………



会いたいな………

彼女は今何処にいるんだろうか?



そう言えば あの誕生日の日の彼女は綺麗だった。 何時もは制服だからか

彼女の瞳と同じ色をしたドレス姿にドキドキした………


最後にあった時は

凄い剣幕て怒鳴られたっけ………

怒った顔も可愛かった………



思い出すのはレティの事ばかりだった。




会えると思っていた為か

会えない事がこんなにも辛かった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る