第8話 二人で並んで歩く並木道


制服の上に白い割烹着を着て、三角巾を被り、亜麻色の長い髪は後ろで1つに束ねられていた。


可愛らしい………

開いた窓から見える彼女を見ていた。


腕捲りをして包丁を持つ手が危なっかしい。

ジャガ芋に集中しているのか、大きな目を細めたり、見開いたりと何やら忙しそうだ。


上手く剥けた時の嬉しそうな顔は何時までも見ていたいと思った。


扉を開けて出てきた彼女に心が踊った。


割烹着と三角巾は外していたが、長い髪はゴムで縛り、まだ後ろに束ねられていた。


貴族の令嬢が平民に混じって部活をしてる事に興味を持った。


仲良くして貰えて嬉しいと言った事に何故か胸がツンとした。

こんな事をサラリと言う貴族の令嬢は初めてだった。


もっと彼女を知りたいと思った。


彼女は親友のラウルの妹だ。

確かに ラウルも、誰かれ構わず人として接する事が出来る。

街に出たら平民の知り合いも多そうだ。

頭の回転が早く機転もきく彼は、他人を不快にさせない話術を持っている。


これは父親のルーカス譲りだろうか……

仕事柄、色んな人と接する宰相は彼にピッタリの職業に違いない。


父である陛下に 国務を司るには信頼出来る友が必要だと言われて来た。

エドやレオもそうだが、友に恵まれた自分はラッキーだったと思う。


そして 信頼だけじゃなく、自分と同じ様に並んで歩んでくれる妻も必要だ。

自分にとっては皇后ではなく妻であって欲しいと思う。


しかし皇族と言う立場上、政略結婚も仕方ないと理解している。


留学から帰国して そろそろ水面下で、婚約に向けて動いているのは知っている。


何気に令嬢達とのお見合いやお茶会に参加させられてウンザリしてる所だ。


そんな時に彼女に出逢ったのだ。


出逢いが強烈だった為か、彼女に惹かれていないと言えば嘘になる。

だから もっともっと彼女を知りたいと思った。 リティエラ・ラ・ウォリウォールの事を………


そんな思いもあって彼女に会いに来た。


まだ出逢ったばかりだと言うのに、こんな風に自然に話せる事が不思議だった。


キャベツの千切りにもちゃんと理由があったんだね(笑)


それにしても………

「 私にとってはエドもレオもお兄様みたいなもんだから、殿下もお兄様になったら良いと思います 」


兄?

兄だって?

とっさに、兄なんて嫌だと思ってしまったのは、どう言う気持ちなんだろうか?



時間が経つのが早く感じた。



並木道がもっと続けばもっと色んな事を話せるのに………



そして 並木道を2人で並んで歩く事が何よりも心地よかった。

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