第6話 レティと呼ばないで
よくよく考えてみれば、私の父は皇帝側近の宰相。 2歳上の兄はアルベルト皇子と同い年。
なので接点が無いはずは無かった。
ただ私は 一昨年までの殆どを公爵家の領地で過ごしていた。
領地での暮らしが好きだった事もあり、皇都にあるお屋敷には、時おり母に付いて来て滞在するだけだった様な気がする。
昨年に兄が1年間の留学をする事と、私が今年入学する事もあり、1年前に公爵邸にやって来たのだった。
………と何故かあやふやな記憶があるだけで 3度の人生の記憶が強烈過ぎて、子供の頃の記憶が遠く遥かな所にある様だった。
私の始まりは、もはや入学式でしかなかった。
母と兄と皇子と私で居間で歓談していたが、私は色々と複雑な思考から抜け出せずにいた。
「 どうした?! レティ! 渋い顔で」
「 あらあら………何時もはお喋りなのに、殿下が来られて少し緊張しちゃったかしら? 」
「 緊張しなくて良いよ! 僕らはもう友人だ……ね?! レティ」
いやいや………
私の愛称を呼んでも良い許可なんて出していないのですが………
私の名はリティエラですが、小さい頃に自分の事をレティとしか言えなかった事もあり、可愛いからとそのまま『レティ』が愛称となったのである。
なのでレティと言う呼び方をするのは、家族と兄の幼馴染みのエドガーとレオナルドだけだった。
「 レティ! 僕にも何時かキャベツの千切りをご馳走してくれたら嬉しいな 」
おい! こら?! だから何時愛称呼びの許可をしたよ?
いやいや……それよりキャベツの千切りって何だよ?
「 今は大根と胡瓜の輪切りも出きますわ! 」
「 ワタクシ……確実にお料理の腕が上がってきてますのよ 」
「 夏休みに領地の湖で釣った魚を捌く事が、もっかの目標ですわ 」
フフン♪♪どうだ凄いだろ~♪♪♪
アルベルト皇子が喉をクックッとならし笑っていた。
あら?!アルベルト皇子って案外笑い上戸なのね………
そんな所も可愛いわ………
「 じゃあ今度、魚を捌くところを見せて 」
「 いや、それって料理じゃ無いだろ? 」
ラウル煩い! ラウル煩い!
「 突然の訪問で迷惑をかけたね 」
「 宰相に宜しく! 今日は楽しかった、有り難う 」
我が家の庭をよくよく見たら、皇族の馬車が止まっており、護衛が沢山居た。
我が公爵家お抱えの護衛と皇宮の護衛。
皇子も大変な仕事だわね………
「 じゃあね、ラウル!レティ!また明日 」
「 おう! 明日な! 」
ああ……あかん………
これは反則だわ……
軽く手を上げて手のひらをヒラヒラとして去っていく姿も 、夕日を受けて輝きを増している。
美しい………それより、足長すぎませんか~?
危ない もう少しで死にそうになった………
ラウルは何時もこれを見ているのよね?
たまには死なないのかしら?
チラリと見たらラウルはさっさと自宅に戻って行った。
皇族の立派過ぎる馬車がカラカラと動き出す。
…………またね…………
私は心で呟いて………
軽く手を降った。
やはりどう考えても
殿下が我が家に居たなんて………凄く複雑だった。
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