第69話 お色気作戦になんて屈しない④

 ハレオは、4人に連れられてリビングのソファーの上に正座させられていた。


 「ハレちゃんっ、いくらダテオさんのトラウマがあるからって、それはないんじゃないかしら」

 「おかしいと思ったんだよ、私のアプローチにも全然平気な顔だったし」

 「お母さんの胸を見てたのは気のせいだったのかな」

 「ショックだけど、私は応援してもいいかな」


 「みんな一体何を怒っているんだ?」

 身に覚えのない怒りに首を傾げるハレオ。


 「ああ、そうか、あんな場所に居た所為で、女への興味が薄れてしまったのね、私がもっと早くに一人立ちさせていれば……」

 ユウは、自分の不甲斐なさを嘆いた。

 「確かに、ナリくんは可愛い系男子だけどさ」

 「大丈夫よお兄ちゃん、まだやり直せる。私達が目を覚まさせてあげるから」

 「LGBTは色々複雑だとは思う、けどハレオとナリヤスくんなら許せるかもしれない」

 前向きなボタンとトウカはハレオの更生を願い、BL好きなスミレは許容しかけている。


 「だから、ハッキリと言ってくれ、俺が一体何をしたって言うんだ」

 謎の尋問に、だんだん苛ついてきたハレオは、正座を崩して抗議した。


 「ハレちゃん、ちょっと待っててね」

 ユウは、そう言うと他の3人を連れてキッチンへ向かった。


 「お色気作戦は中止ね、あの程度じゃハレちゃんの目を覚ますことは出来ない」

 「「「じゃあ……」」」

 「ええ、強硬手段に出るわ、私が女の素晴らしさ、本気を見せてあげる」

 ユウは、腕をまくると、ハレオの方を向いた。


 「ちょっと待って下さいユウさん、ここは私に任せて」

 ボタンは、必死にユウの腕を掴み引き留める。

 「なによ、年功序列でしょ」

 「そんなの無いですよ、ハレオくんもきっと若い方が良いに決まってます」

 「若さなら、私が一番じゃないですか」

 ユウとボタンの争いに切り込んだトウカだったが、その意味とこの後の展開を考え、恥ずかしさで顔を真っ赤にした。

 「「……おこちゃまは、ゲームでもしていなさい」」

 ユウとボタンは声を合わせてトウカの肩を叩いた。


 「ちょっと待って、私は無理やりは良くないと思います」

 BL展開に興味津々なスミレは、ハレオの肩を持った。


 「ダメよ取り返しがつかなくなる前に、矯正しなきゃ」

 「ですね、でもユウさんだけはズルいです」

 「ゲームよりも、こっちの方にちょっと興味が……」

 「……みんながそう言うなら私も」


 「よし、じゃあもうこうなったら皆で行くか」

 「「「はい」」」

 ユウの先導に、少女達は覚悟を決め、リビングへと赴いた。


 「「「「あれ?」」」


 「ちょっと買い出し行ってくるから、部屋の掃除でもやっといてくれよ」

 「「「あっちょっと待って」」」


 痺れを切らしたハレオは、いつの間にか玄関で靴を履き、ドアを開けて外出してしまう。


 この後すぐに誘拐されてしまうことも知らずに。

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