第33話 男の子は男の娘らない③
「どうするナリヤス、俺の家に帰って、みんなで昼飯食べながら続きを話そうか?それとも、このまま2人でファミレスにでも寄るか?」
「……ハレくんは相変わらずだね」
「なにがだよ」
「前者は、ボタンちゃんとトウカちゃんに、後者は僕に、それぞれ気を使い過ぎってこと」
「そうか?別にそんなつもりはないけどな、というか、やっと昔のナリヤスに戻ったな」
「な、なにが?」
「そうやって理屈っぽく何かを比較する癖、全然中身がないけど変わってなくて安心したよ」
「ちょっ、中身がないとか失礼じゃない?ハレくんだって、そんなんじゃ、いつか誰かを傷付けるよ」
「なんでだよ」
「なんでって……まぁいいや、ハレくん家に行くよ、ボタンちゃんにも急に飛び出したこと謝らなきゃ」
「そうそう、今日のお昼はピッツァにしようと思ってたんだよ、俺ん家、石窯付きだからさ、石窯で焼いたピッツァは最高だぜ」
「は?自宅にピザ窯?どういうこと?」
「ナリヤス、ピザじゃないんだぜ、ピッツァだ」
「いや、そんなのは知っているけども、前者は……」
そんな何気ない会話を交わしながら、ハレオ宅へ戻るナリヤスの顔は、少し上向きになっていた。
「ただいまー」
「おかえりハレオ、大変だよっ」
「なんだスミレ、来てたのか」
「うん、トウカちゃんに入れてもらった。お、ナリくんも一緒だったのか」
「久しぶりだねスミレちゃん」
「ナリくん、挨拶は後だよ」
「どうしたんだよスミレ、そんな慌てて」
「いいかいハレオ、気をしっかり持って付いて来てくれ」
「な、なんだよ、なんか嫌な感じが……というか何だこの匂いは」
「いいか、絶対に笑うなよ、絶対に怒るなよ、2人とも落ち込んでいるんだからな」
神妙な面持ちで、スミレはハレオとナリヤスをキッチンに案内した。
「ぶーーーーーー、わっはっはっはーなんだよそれーーーー」
「だめだよ笑っちゃダメ、ぷふふふふっ、あーっははははははーー」
「ボ、ボタンちゃん?だいじょうぶ?ぷふっ」
ハレオもスミレもナリヤスも笑いを堪え切れない。
「「窯が爆発した……」」
まるでコメディ映画のワンシーンの様に、炭で顔が真っ黒になったボタンとトウカ、その体には飛び散ったピッツァの具材が綺麗にくっ付いていて、黒くなった衣服を見事なまでに彩っている。
そして、その2人のハモった発言に、残りの3人は、腹を抱えて笑う事しか出来ない。
「ちょっとお兄ちゃん、笑い事じゃ……」
「ちょっと待ってトウカちゃん、ここはピエロを演じましょう、怒られるよりマシよ」
「う、うん、そうだね」
そんな2人のやり取りに悶絶するハレオ。もう怒るなんて出来るハズもない。
皆で地獄絵図と化したキッチンを片付けながらもクスクスと笑いは絶えず。
爆発した理由とか、怪我がないかとか、お昼どうしようとか、全部が全部笑い話にしかならない、そんな空気、空間。
ナリヤスは、それが嬉しくて堪らなかった。
性がどうとか、会っていなかった期間に、何があったのか、今、どんな悩みがあるのか、そんなものは、きっと時間が、友達が、仲間が解決してくれる。
ナリヤスは、心の底から笑っていたのだった。
月曜日。
その日の最後の授業。
「今日のグループディスカッションのテーマは【同性愛について】です」
金田は、そう言い放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます