第27話 幼馴染は捧げたくてたまらない①
長名牡丹は、焦っていた。
ハレオと同様に、ハレオの周りでハーレムが形成されつつあることに焦っていた。
一夫多妻制も受け入れられると息巻いたはいいが、男達は拒否し女達がハレオに近付いてくる現状。半分はスミレのカリスマ性もあるが、いざ、それを目の当たりにすると「ハレオにとっては、私もその他大勢の女なのかな、魅力無いものね……」と、その凶器とも言える胸に手を当てて苦しんでいたのだ。
この思わしくない状況を打開する為、ボタンはある計画を立てる。
「家族と喧嘩して家を飛び出してきた、行くとこ無いから、一晩だけも泊めて欲しい」
そうして、ハレオ宅のチャイムを鳴らしたのだ。
「しょうがない奴だな、俺も一緒に謝りに行ってやるから、ちょっと待ってろ」
ハレオはいつもそうだ、すぐに謝りたがる。それはボタンも承知の上。
「でも、もう皆寝ちゃったし、友達の家で頭冷やしてくればって言ってたし」
実際には喧嘩などしてないし、明日は土曜だから足の怪我で落ち込んでいるスミレの家に泊まってくると伝えてある。
「じゃあ、スミレの家に行ってくれ、いくら友達とはいえ同級生の女子を泊めるわけにはいかない」
「スミレも来るって」
嘘である。
もう後戻りなど出来ない、どれだけ嘘を重ねようと、今日はハレオの家に泊まる。ボタンの決意は固い。
「それに、もうハレオくんは1人暮らしじゃないよね、トウカちゃんも居るし、部屋も沢山あるから大丈夫でしょ?ねっ?お願いっ」
これこそがボタンの最大の策だった。
「スミレも?……ゲームで夜更かしすんなよ?」
スミレも来るということは、3人で例のゲームでも遊ぶんだろう、トウカも喜ぶだろうし、俺はやらないけど、たまにはいいか。そうして、ハレオはボタンを招き入れる。
「分かってる、ありがと」
勝利、ボタンは拳を強く握り小さくガッツポーズをした。
トウカの部屋がハレオの部屋から一番離れた場所なのも、おこちゃまなトウカが早寝なのも把握済み。
これで、あの日のリベンジを果たせる、今度は「食べられてもいい」などという恥ずかしい過ちは犯さないし、泣いたりもしない。
今夜こそ、ハレオに捧げるのだと。
「わー美味しそー」
ハレオのお好み焼きに、卑猥な妄想が吹き飛んだボタンは、お好み焼きを貪った。
「スミレの分も残しておきなよ」
「う、うん」
「スミレさんも来るんだーやったー今日は徹夜でMANsできるんだね」
「ダメだ、早く寝ろ」
「そうよ、トウカちゃん、夜更かしはお肌の敵なんだから」
「えーボタンさん、食べ過ぎも肌に良くないですよ」
「安心しろ、肌に良いアボガドと豆苗がたっぷり入ったお好み焼きだからな」
「「……」」
ボタンとトウカは顔を見合わせ「この人はホントにどんだけ」と意思疎通を行う。
そしてボタンは、スミレから連絡が来て、今日は来れなくなったと嘘を付き、トウカと一緒にお好み焼きを完食したのだった。
「じゃあ、ボタンはトウカの向かいの部屋で寝てくれ、風呂場とトイレも奥にあるから、そっちを使うように」
極広のリビングとダイニング、そして居室8部屋、トイレ3つ、風呂2つ、住居とは思えないハレオ宅。
「何度も言うんだけど、シェアハウスにでもすればいいのに、喜んで家賃払うよ?」
「それね、わたしも言ってるんだけど、お兄ちゃん全然聞いてくれないの」
「いいんだよ、気にしないでくれ」
家賃やら維持費やら、一体どこから捻出しているのだろうと、不審がり詮索を試みてはいるが、なかなか尻尾を出さないハレオ。
「さぁ食ったら風呂入って寝よう、美容と健康にはそれが一番だゾ」
「「はーい」」
素直に応じるボタンとトウカ。
そして、消灯後、ハレオの部屋に、音を立てずに忍び寄るボタン。
「息良し、下着良し、気持ち……良し、行くわよワタシっ」
ボタンは、ゆっくりとハレオのベッドに入り込んだ。
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