其ノ四 戦国時代を生きるり…
「美沙殿!」
「「「どちらさんですか?どこにいるんですか?」」」
あ、声が揃ってしまった。
「こっちでありますよ!」
「「「どっち!」」」
「このポンコツどもでありますよ!」
「「「丁寧にけなすな。」」」
「はあー、仕方がないのであります。拙者が案内するのであります。」
最初からそうしろ。
「えっと、君たちから見て斜め右後ろであります。」
こっちか。
「あ…逆でした。斜め左後ろでありました。」
「「「このポンコツでありますよ。」」」
「…ううっ、拙者、一生の不覚。腹を切ってお詫びを…。」
「「「そこまでしなくていい!」」」
「よかったであります。優しいですね、美沙殿とその家来の方々は。」
「「俺(僕)たちはいつから家来になった。」」
むしろ忍者の方が家来では?
いや、つっこむ前に生意気な声の主を探さねば。
今右斜め後ろにいるから、こっから左に動いてっと…
「あ、危ないであります!ふむなであります!美沙将軍の家来!」
家来言うな!
てか、
「美沙はいつから将軍になった!」
「愚問であるぞ、和。忍者の姿は世を忍ぶ仮の姿。」
世を忍ぶために忍に…。
「本当は私は将軍である。和、その姫の格好もお主も世を忍ぶ仮の姿であろう?」
和さん、こんな茶番に付き合わなくても…
「そうであった。」
付き合うんかい!…って、わかってましたけれども。
「姫の姿は世を忍ぶ仮の姿。本当は僕は、」
何なんですか?
「猫である。」
もはや人ですらない。
「将軍様はこんな方だったのですか…。幻滅であります。」
なんかごめんね。
「って、忘れてた。君はどこだい?」
「足元であります。」
足元っ…!
「これ⁉︎」
「そうであります。」
そこには、りすがいた。ちよんまげはやした。
「吾輩はりすである。名前はあります。」
君、戦国時代のりす?明治以降も生きてない?『吾輩は猫である』知ってるよね?
「名前は何て言うの?」
「言ったではないですか、家来one。」
やっぱり現代生きたことあるよね。
「名前はアリマスであります。」
名前だったか、アリマス。
「…センス無っ。」
「何を言うでありますか!明殿がつけてくれた名前を!」
なるほど。明が付けたなら納得…っ⁉︎
「明、明って言った⁉︎」
横で茶番を続けていた和さんと美沙さんもこっちを見る。
「言ったであります。拙者は明殿に言われてここにいるであります。美沙殿とそのお付きのものの男子二人を連れてこいと。」
アリマスに『男子=家来』と吹き込んだのは明だったらしいけど、そこはスルーする。
「ごめん、経緯がわからない。」
「それはおいおい話すであります。とりあえずついてくるのであります。」
「ちょっと待って。一つ聞かせて。」
俺は一番気になっていたことを聞いた。
「君、明治以降に来たことあるよね。」
すると、アリマスは(たぶん)笑って答えた。
「令和なんて知らないですよ。」
来たことあるよね。
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