其ノ三 どちらさんですか
その後、山村を発見し、武士と姫と忍者の三人組というおかしな一行は、変な目で村民の方々に見られつつも、麓の町までの道を何とか聞き出し、山の出口まできたものの…。
「ねぇ、ほんとに…行くの?」
町は人が多かった。だから、和さんが恥じらってる。姫の格好で人前に出るのを。
「まあ、いくら和が女子っぽい顔でも、男子だし、顔と格好のアンマッチは否めないよね〜。そりゃ恥ずかしいわ。あ、でも、別にいいと思うよ。」
美沙さん!俺がひた隠しにしていた事実を!
∑(゚Д゚)
ほら、和さんもこんな顔になってますし。
「やっぱり、行きたくない。」
そんなにきっぱり言わないでください。
「わかった、じゃあ、置いてく。」
そんな酷な。
「ごめん、わかった、ついてくから置いてかないで!」
和さんは、そう言うと、美沙さんに走り寄る。
俺も慌てて二人を追う。
美沙さんに追いつき、顔を覗き込むと、美沙さんはとても悪そうな顔をしていた…。
むむっ
「この手、よく使うんだよね。あいつ、いっつも行きたくない〜ってごねるからさ。」
美沙さんがこそこそっと言う。
「あれ、お二人っていつ知り合ったんですか?」
「えーと、幼稚園の頃?かな。」
「…それで二人とも楓学園中等部にはいったんですか⁉︎」
日本最高峰の中学に⁉︎二人で⁉︎一発で⁉︎
「さっきと一緒だよ。私が受けるって言って、一緒に行こうよって言ったら、また無理だよって言うから、じゃあもう別々だよって脅しただけ。そしたら、和、猛勉強して受かったの。」
「美沙さんが受からないと言う可能性は考えなかったんですか?」
「まあ、磐石って言われたし。なんか受かった。」
何その余裕。俺なんか、絶対落ちるって言われて、めちゃくちゃ勉強させられたのに。
「なーんの話してるの?」
和さんが割り込んできた。
「ん、和が可愛い話してたの。」
「えー何の話?」
「まあまあ和くん、世の中には知らない方がいいこともあるのだよ。」
「えーなんか怖いんですけど。」
と、楽しく話してたから忘れてたけど、
「視線が痛いね。」
「そうですね。」
「側から見たらどういうシチュエーションかよく分からないし。」
武士、姫、忍者。
武士はまだいいとして、姫が街中うろうろしてるとか、忍者が昼に堂々と歩いてるとか、全くもって意味不明。
「早くこの視線から抜け出そう。」
美沙さんの言葉にみんなが同意したそのとき。
「美沙殿!」
どちらさんですか?
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