ひよこの声闘争
トマトも柄
第1話 ひよこの声闘争
ここは闘技場。
そこは毎度ひよこ達の決闘が始まる。
闘技場の中央にはマイクを持ってサングラスをかけたひよこがリング中央に現れる。
「全世界のひよこ諸君! お待ちかねの勝負の時間だー!」
ぴよぴよと歓声が上がる。
「さて! 我々の仕事とは何か!? 飛ぶ? 走る? 寝る? 違う! 断じて違う! 我々にはこの声があるのだ!」
サングラスをかけたひよこはマイクを放り投げ、自らの口で声を上げる。
「我々には大事な仕事があるはずだ! 毎朝の挨拶の声である! 我々の声によって朝が始まる! つまり! 全ての始まりが我々にかかっているのだ! これはとても重大な仕事である! 全ての動物の始まりがかかっているのだ! 諸君よ! 声を張れ! どこまでも聞こえるように張り上げろ! そして始まりを告げる声を上げるのだ!」
歓声が巻き起こり闘技場を沸かせている。
そして、選手入場が始まった。
「黄色コーナーより挑戦者! ひよなさんの入場です!」
黄色コーナーから一匹のひよこが入場がする。
「続いては白コーナーよりひよ野さんの入場です! ひよ野さんは六戦の防衛戦を潜り抜けている王者でもあります! この勝負、どうなるのか!?」
白コーナーからも一匹のひよこが入場する。
二匹のひよこが対面で向かい合っている。
「では、ルール説明を行う。 これはどれだけ声が聞こえているかの勝負である。 声を張り上げる内容は問わない! ただし、過度な暴言や誹謗中傷を行った場合は即失格とさせてもらう! 両者、準備はよろしいか?」
二匹のひよこは頷く。
「今回のジャッジは一番奥にいるニワトリ様達に来てもらいました! では、私もそちらに移動します!」
ニワトリ達は呼ばれたのに気付いてコケコッコーと雄たけびを上げている。
「ではひよこの声闘争の開始の時間ぴよー!」
サングラスのひよこの雄たけびと同時に勝負が開始される。
「やってやろうじゃねぇか! こんにゃろー!」
「俺の防衛記録破る気か! ああ! こらー!」
二人の掛け声を遠くからニワトリ達が眺めている。
「どうでしょうか? 今回の挑戦者は?」
サングラスを光らせながらひよこはニワトリ達に話している。
「今回の挑戦者は良い声出してるね~。 王者に引けを取らない声量をしているね」
「確かにスタミナも持ちそうで悪くない。 これは見込みあるな」
「これは面白い勝負になりそうですね」
ニワトリ達はニヤリと笑いながら、二匹のひよこを見届けている。
「あぁ! そんな数に拘った防衛記録なんてどうでも良いんじゃい! こっちと勝負しろや!」
「さっきからしとるだろうが! お前との勝負やっとるやろうが! おお! お前との勝負勝って七戦連続防衛したるぞ! こら!」
そのやりとりを数十分言い合い、時はどんどん過ぎていった。
二匹のひよこは声がかすれていき、殆ど大きな声を出せない状態になっていた。
「しゅうーりょうー!」
サングラスをかけたひよこが終了の掛け声を出す。
それで二匹のひよこの声が止まり、闘技場は一気にしんと静まり返った。
「では、ジャッジをお願いします!」
ニワトリ達がジャッジを出す。
ニワトリ達は羽を平行に拡げ、お互いに五分だった事を指す。
「ドロー! ドローです! この勝負! 引き分けです!」
二匹は疲れ切った顔でお互いを見る。
「では、この勝負をまた後日行います! 次はドロー無しの勝負で行います! 必ずどちらかの勝者が決まります! 次回をお楽しみに!」
そして、後日。
サングラスをかけたひよこがマイクを持って声を出す。
「先日のドロー勝負から数日。 あの激戦を繰り広げた勝負が再び開始されようとしている。 これは運命か!? 偶然か!? はたまたライバルと認め合うための対決か!? それは誰にも分からない」
そして、マイクを放り投げる。
「だがこの場所でそんな過去は関係ない! 今このときの勝負が始まるのだ! ひよこの声闘争の開始だごるぅあー!」
再び二匹のひよこの声量対決が始まるのであった。
ひよこの声闘争 トマトも柄 @lazily
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