第10話 従者ゲット
「お口に合うと良いですけど...」
マナは得意の絶頂に居た。
新しく出来た使用人はしっかりとその仕事を全うしている。
朝からシドニーの淹れた紅茶を飲み干し満足そうに笑ってみせる。
「とても美味しいわ」
「ありがとうございます!」
事実シドニーの淹れた紅茶はとても美味しかった。
たしかにグレースが生み出した紅茶よりは劣るがあれは
それを抜きにしてもシドニーの淹れる紅茶はとても美味しい。
シルビアの淹れる紅茶に勝るとも劣らない程に美味しいのだ。
やはり私の目に狂いは無かった。
昨日、獣王国で出された毒入りの紅茶。あれを取り込み体内にて毒と紅茶に分解してみた所...素材の味を最大限生かされた淹れ方をされていたのだ。
そう思うと昨日の紅茶に毒を入れた
「スカーレット様...本当にありがとうございます...」
「今更構わないわ」
私からしたら只のヘッドハンティングの様な感覚だったが、された側では状況が異なる。きっとこの子は私に毒を盛った時点で死を覚悟したのだとその涙を見て悟った、毒を入れてなければ
そっとシドニーを抱きしめ獣人特有のフサフサな耳と尻尾を優しくなぞる。するとシドニーから可愛い声が漏れだす。
「あの...耳と...尻尾は...っその...敏感なので...」
顔を赤らめながら言うシドニーにとても興奮を覚える。
華奢な体をくねらせ声を殺す様に耐えるその姿に...。
すると突如頭部に痛みが走る。原因は一つしか考えられないので多少怒り気味に振り替える。
「ちょっとシルビア!!何するのよ!いちいち防御貫通乗せてくるの止めてくれるかしら!!」
「だってお嬢様はそうでもしないと気付かないですから...それと...お楽しみの所悪いですが獣王国から使者が来たようですよ」
「そう...指示通りね...さてシドニー、貴方をメイド長に任命するわ教育もしっかり頼むわね」
「はい!は...はい?あの...私まだ昨日来たばっかりなんです―――」
シドニーの言葉が終わる前にシルビアを残し逃げる様に転移した。無茶ぶりなのは100も承知なのだ。ほぼ誘拐じみたことをした自覚もあるのでここは逃げるが勝ちなのだ。シドニーならば文句も言わずにしっかりと働いてくれるだろう。
転移すると玄関の前に2台の馬車が止まっている。
私達が現れると馬車の中ワラワラと人が湧いて出てくる。
全員が獣人であり猫科と犬科に統一されている。
全員はしっかりと教育を受けている様であり動きが洗練されている。
だが...何故か10人も居るのだ。それも5人はまだ子供だ。
「私は一人と言ったはずなのだけど...これはどうゆうことかしら」
私の言葉に対しリーダーと思しき女性が代表して説明をする。
「実は...実際に送られてきたのはそちらの子供5名なのですが...
流石に子供だけでは役目を全うする事が出来ないと思い私共も不肖ながら同行させていただきました」
「何故子供が...」
「上層部の話によると...覇王様は子供が好きと...」
「え?あぁ....はぁ...」
思わずでた溜息が零れる...
でも仕方がない...これも獣王国が考えた結果なのだろう。ならばそれは受け入れるべきであろう。むしろこれで子供達を帰したとグレースが知ったら怒られそうだからである。最悪仕事が出来ないのならばグレースにでも送ればいいだろう。
「まぁいいわ!それじゃあ付いてきて貰えるかしら」
『はい!』
全員を連れてシドニーの元へと戻る。
その10人を見るなりシドニーはとても驚いた様子だった。
「あのスカーレット様?この方々は...」
「今獣王国から送られてきたあなたの部下よ」
「え...私のですか...」
「それじゃあ任せるわね、私はグレースに報告しなければいけないことがあるから
ここの案内はシルビアに任せるわ。それじゃ」
シルビアは坦々と城を紹介して回った。子供達は目を輝かせ大人達はその広さに絶望する。以前の王宮の倍はある城をたったの11人で管理しなければならないのだから。しかも半分は子供...シドニーは再び頭を悩ませるのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は
俺たちが再び戻る頃にはかなりの強さを得ているだろうし一つの楽しみでもある。
せめてフリューゲル―――ゼルセラなど幹部を除く―――達を圧倒できる強さが欲しかった。
一応最終奥義も考えてあるのでメトラとデフォルトならギリギリ相手にできるだろう。だが、最終到着地点は俺たちと並ぶ強さだ。恐らく不可能だが...。
余談だが、メトラやデフォルトにはシルビアと同程度の従者を付けている。
いわゆる俺の眷属だ。条件も同じで同等のステータスで生み出した後に10分間だけ時間を与え【時空の狭間】に送り出した。
シーラとキーラには与えていないがエミールにも与えている。
エミールの場合メイドではなく副団長としてエミールのアシストをする聖騎士になっている...。
マナの侍女―――シルビア
エミールの侍女―――セシリア
デフォルトの侍女―――ストリア
メトラの侍女―――サラリア
シーラには必要ない、いずれ自分で作ると言っていたので問題はないだろう。
キーラの付き人は
ゼルセラに従者は付けていない、むしろ俺の従者がゼルセラだ。
まぁいずれ欲しいと言われれば作る事も考えているが...。
そんな訳でそれぞれに従者が居る。当然だが、適度に全員集合する集会を開くこともある。
メトラやデフォルトは一応国のトップなので色々とやることがあるのだ。
正直、デフォルトがどうして学院に通いながら国の統治が出来ているのか俺にはわからない。まぁ彼女なりに配下に指示を出して上手くやっているのだろう。といつも考えない様にしているが...不思議な事に大鬼の国はとても安定しているのだ。
マナは言うまでも無い...配下と言うか執事に魔王の代わりをさせて自分は国に関与していない。今までもそうだったしこれからもそれでいいと彼女は言ってるが...。
そんな各々の国の重鎮たちが明日集まるのだ。集まる理由は顔見せもあるが【龍大国】の創立の記念と話し合いである。
俺と言うよりかは俺の分身体であるリリィには入学式と言う大切な行事がある。俺はグレースとして入学式に参加せねばならない。そしてそれは他の者達も同じだ。
同盟を組み学院に子供を通わせている魔王達もだ。
友好記念と言うのもありもれなく全員集合である。
俺たちの国である【ノエル王国】そこから西側はほとんどが同盟国となった。
だが、その逆の東側はほとんど手付かずなのだ。
東のインデュランス帝国の事も詳しくは知らないし、その帝国よりも東側に存在する魔王領に関しても俺は知らない。未だに世界の約50%が未知なのだ。いずれは
いまさら喧嘩を売ってくる国も無いと言う判断だ。
と言うよりノエル王国の女王である【プランチェス・ノエル】が同盟を結びたいと言うのだ。
どうやら帝国には異世界人が多く在籍しているらしく戦力が未知数なのだとか...。
正直、負けるとは思っていない。だが、興味があるのは事実だ。
異世界人はどいつもこいつも強力な
俺が玉座に座りそんなことを考えていると来客が来たのだ。
青白い髪を靡かせ藍色の着物を着崩し大きな刀を引きながらカラカラと歩く、頭に特徴的な白磁の角を生やした鬼。その横にはくすんだブロンドヘアーに生気を感じさせない肌をしたゴシックな少女だ。さらにその背後に見事な銀髪のロングヘア―を後ろで一つ結びにしたいわゆるポニーテールの侍、侍らしく着物を着こなし腰には刀を携帯している。平行して歩くのは綺麗な銀髪が肩に付く程度の長さをした人形の様なゴスロリ少女が居る。
もちろんデフォルトにメトラだ、付き添いも俺の眷属のストリアとサラリアだ。
懐かしい姿に俺は少し胸を高ぶらせる。俺が視線を送れば従者たちは一礼しデフォルトは大きく手を振る。
「おお!ハオー!久しぶりなのだ!!こんな所で会うとは奇遇なのだ」
「必然です」
「そうとも言うのだ」
息の合ったデフォルトとストリアの掛け合いにクスリと笑うメトラ。
懐かしい顔触れに俺の表情も流石に崩れてしまう。
「元気にしてたか?」
「我輩はいつも元気なのだ!」
「覇王様こそ元気そうでなによりです」
デフォルトの相変わらずの口調にメトラの礼儀正しい口調。
ちらりと従者たちに視線を送る。
「お前たちはどうだ?うまくやれてるか?」
「はっ!最近は姫様が私の修行に付き合ってくれるので刀もだいぶ扱えるようになりました」
「ストリア!!一人称は
「申し訳ありませぬ...某の修行に姫様が付き会ってくれているのでござる...」
「よろしいのだ」
「お、おう...」
う、うん仲良くやれている様だな...たぶん...。
語尾と一人称を決められるなんて少し不憫に感じなくも無いが...デフォルトなりの拘りがあるのだろう。さらに視線を動かせばメトラの従者のサラリアも口を開く。
「どうだ?仲良くやれているか?」
「はい...ですが...最近は着せ替え人形に―――」
「サラ...」
じっーーーっとサラリアの目を見つめるメトラ、すると諦めた様にサラリアは言う。
「はい...仲良くやれてます...」
「当然です」
「そ...そうか」
一体どうゆう関係なのだろうか...少し気になる...
「着せ替えと言ったな...どんな服なんだ?」
「覇王様も気になりますか!!」
俺の問に対し目をキラキラさせながら俺に寄るメトラと逆に恥ずかしそうに俯くサラリア。
「サラ!セット158よ!」
「は...はい...
サラリアがそう告げると体が光に包まれ衣装が変わる。
光が収まるとそこにはゴスロリの少女ではなく制服というよりかはセーラー服姿の少女が居た。かわいい...それが俺の素直な感想だった。
「ほう...中々良い趣味をしているなメトラよ」
「実は大書庫の
「セーラー服か...ふむふむ...」
「あの...覇王様の前では恥ずかしい...です...」
うぐっ!!
なんだこの可愛い生き物は...
「サラ!次はセット288よ!!」
「うぅ...はい...
今度はアイドルの様な衣装だ。暗い色から打って変わって白を基調としたフリルが付いている。
これも可愛い...衣装の可愛さもあるのだが―――なにより恥ずかしがっているサラリアが可愛いのだ。
俺は次の衣装を期待し待っているとそれをデフォルトが静止する。
「他にはどんな衣装があるんだ?」
「今のが最近作り出したセットでその前がですね...サラ!セット―――」
「ハオー!我輩はこんなくだらない事をするためにここに来た訳ではないのだ!」
「....くだらない...ですって?」
くだらないと言う単語に過剰な反応を見せたメトラの雰囲気が一瞬にして切り替わる。
「ハオー!我輩はメトラと【時空の狭間】を使わせてもらいたいのだ!!」
「と言ってるがメトラは使うのか?」
「はい...たった今私にも使う理由が出来たので白黒はっきりつけてこようと思います」
「お、おう...程々にな...」
俺は4人を見送ることにした。メトラは怒らせたら怖いのだ。
あの最後に見せた笑顔には俺ですら悪寒を覚えた。まぁ仲良く喧嘩してくれればそれでいいと気持ちを切り替えることにする。俺の口元は自然と笑みを浮かべていた。
次に俺の元に現れたのはシーラとキーラだった。
「なにニヤニヤしてるんですかお兄様....」
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