第1話 覇王様少女に変装する
エミールを救いだし別れを告げたあの日から約一年...。
エミールはもう一人の自分から授かった力を使い国を守護する剣となり盾となった。聖騎士団団長として王の勅命に従っている。その隣には副団長の姿もあり他国からはより一層強力な国とり徐々に国としての技術も発展してきている。
シーラ達は進学し二年生になり今年初めて後輩ができる事になる。そんなシーラとキーラの同級生であるミーシャとマーシャには役目を与えた。
それは以前から言っていたこの世界に5体しか存在しないとされる龍種の捕獲だ。
春休み中に行わせ新学期には恐らく間に合うと思われる。
デフォルトとメトラも学院に通いつつそれぞれの国の統治を行って貰っている。
メトラの国は
皆が様々な進歩を見せる中、俺は悩んでいた。
それは、俺が王になるかならないかだ。
ゼロの様な子供が居る以上それなりの地位に就いて居たい。俺に老衰と言う概念が無いので国を任せると言う事があるかわからないが...。
現状この国の政治に対し口出しもしないし俺が何かを言えばこの国、ノエル王国の王女であるプランチェス・ノエルは首を縦に振り俺の要求を呑むので不自由は一切していない。
それから戦争には手を出さないと言う取り決めになった。と言ってもそれは王国が戦争を起こす場合に限り、他国からの侵略等に対しては俺たちからも王国の補助を行う。もし仮に俺たちの戦力を王国が悪用するようであれば俺は王国を敵とみなし俺は俺で新しく国を建てる。必然的にこの地から去る事になるだろう。
建国は大変かと思うが案外簡単に建てれるのだ。
ノエル王国を後ろ盾にし建国することも可能だし、そもそも強引に建国することも可能だ。
強引にと言うと、聞こえは悪いがわかりやすく説明すると、メトラとデフォルトの治めていた国を俺の土地として俺の国にする。
既に二人は俺の配下なので問題はないし、元々メトラは国はあるがその住民はアンデット。
どのみち建国したとしても最初は修羅の世界のエルフ達と
住民もそのうち増えて行くだろうがその中でも獣人に目を付けている。
住まわせたいとさえ思っていた。
獣人の国である【獣王国ヒドサアード】。
魔王が収める領地で多くの獣人が在住している。
豊潤な土地と資源、それからモフモフ。
一度遊びに行き配下を得たいと思っていたのだ。
既に魔王達とは同盟を組んでいるので心配はないし俺が国を建国したとなれば魔王達も恐らく祝ってくれるだろう。きっと向こうから同盟の申請してくるはずだ。
建国に関しては心配していない、それに俺には今楽しみもある。
実は俺も学院に通おうと思っているのだ
本来は学院長として通うはずだったが正直それでは退屈なので生徒として成り済まそう思ったのだ。
能力を制限させ一般の女子になる。魔法も運動能力も外見も人並みの普通の女子。
俺の本体は学院長室に自立意志として行動を行わせるので問題はないし、もしもの
為の協力者はジルニルだ。
共に学院に通う事にしたので同じ年での入学になる、最初は一人で行こうと思っていたがカモフラージュと護衛も兼ねて学院の寮で共に暮らす事にしたのだ。
明日からは新学期が始まる。
入学試験は平均を目指したのでもれなくCクラスだ。
Sクラスに入る事は至極簡単だが、普通の女子はそんな力を持たないので仕方なくだ。入るところは魔法科であり理由もしっかりと存在する。
それは武術科だと手加減が難しいと言う理由もあるが武術科は男が多そうという理由からだ。
できれば学校生活は女の子として女の子とキャッキャしていたい。
単純な理由だが...それこそが大切なのだ。
玉座に座りながら今後をのんびり考えていた。
実の妹の兎愛を救う事も出来たし俺に残された使命は無い。
修羅のエミールは元の世界に残り前世の西島綾香として生き続ける事を決意した。
久しぶりに元の世界に遊びに行ってみたい気もするが...。
今は学院の生活が優先だ。
俺はもう一人の俺を作り出し俺の代わりに玉座に座らせる。
そして自分の身体を少女の姿に作り変える。
光が収まると俺の姿は齢15歳程の少女の姿に変わっている。
俺がかなり長い期間を要して作っただけありかなりの情報秘匿性能を秘めている。
並大抵の解析スキルではこれが俺だとは気づかないだろう。
改めて自分の容姿を眺めてみる。
「ふむ、我ながらかわいいな」
シーラやキーラなどと比べると可愛さや美しさでかなり負けているがこれが普通なのだ。
平凡的な茶色髪に黒目。これが重要であり目立たずに普通の女の子として学園生活を満喫するのが目的なのだから強さと可愛さは必要ないのだ。もしくは平均的でいいのだ。
残念な事にこの状態だと魔法が扱えないので俺自身に指示を出し転移の魔法をかけさせ学院生専用の寮にある玄関先に転移する。
俺...いや、私が寮に入ると寮母さんの様な人が声を掛けてくれた。綺麗なブロンドヘアーに特長的な長い耳。
「こんにちわ、えっと確か...」
「リリィです!」
私は『グレーステ・シュテルケ』改め『シュミラ・リリィ』を名乗る。
この姿の時は魂に刻まれた名前もしっかりと改竄しているので例え鑑定系のスキルを使われたとしても名前はリリィと表示される。
故に見抜かれる心配はない。たぶん...
ただ....本来のステータスを解放する事は出来るがシーラに頼ることが出来ない以上解放するのはあまりお勧めできない。
寮母さんから寮の説明を受けつつ自分の部屋へと案内を受ける。
ここまでは計画通り。そして....
今日から暮らすことになる部屋の扉を開けると1人の少女が部屋の整頓をしている特徴的な桃色の髪に白銀の翼を生やした天使の少女だ。
その天使は私の顔を見ると無垢な笑顔を浮かべる。
「初めまして!私ジルニルって言います!よろしくお願いします!!」
寮母さんも出て行き残されたのは私とジルニルの二人だ、純粋無垢な笑顔をしているが私の正体はばらしているはず...だが、不意にばらされても困るので確認は必要だろう。
「私が誰か分かる?」
私の質問に対し疑問を浮かべるジルニルに少し戸惑う、もしかして本当にわからないのか?
「えっと...リリィさんですよね?」
「私だよ!グレーステ・シュテルケ!」
驚愕の表情を浮かべ私の顔をじっくり見る。
「ほんとにご主人様ですか?私に知ってるご主人様はもっとかっこいいですよ」
「それは少し照れるのだけど...仕方ないわね」
指を鳴らし髪の色だけを銀髪に戻す。
「わぁ!!ほんとにご主人様とおんなじ色!!」
「色だけで判断してもらいたくはないがわかってくれたようね」
再び指を鳴らすと銀色の髪は茶色に戻る。
事前に伝えておいたはずが俺の変装があまりにもハイクオリティだったせいでわからなかったようだ。
共同部屋と言ってもまだ来たばかりなので私の家具は一切ない。
あるのはベットと机とタンスのみ、一般的にはこれで問題ないが私としては可愛さが足りない。
せっかくかわいい女子になったのだからぜひとも可愛く女子力高めの生活を送りたい。
その為にはまず可愛らしい部屋から取り掛かる。
ベットの掛け布団は桃色に変え壁紙も薄い桃色にする。
可愛らしいぬいぐるみも飾り机に花瓶と花を添える。
観葉植物も忘れてはいけない。
熟考に熟考を重ね床材も変える事にした。
ふむ...ただこれだと少し快適さに欠ける。
部屋自体はかなり少女の部屋っぽくなったが...冷蔵庫でも作るか...。
ただこのファンタジー世界に近代的な冷蔵庫を作り出してしまうと周りに怪しまれてしまう。
そこで...だ。
クローゼットの中の空間を魔法で拡張しそこを冷蔵庫とした。
虚数空間と化したその空間でなら本来の力を使おうと被害はない。
氷結魔法を利用したことにより前世とは違う異世界式の冷蔵庫が完成したのだ。
「ご主人様?これは一体なんでしょうか?」
ご主人様はやめてくれと言ったが...
これでは不意に呼ばれて直ぐに正体がばれてしまう先にしっかりと伝え特べきだろう。
「リリィだ。この姿の時ご主人様と呼んではだめだぞ」
「申し訳ありません...気を付けます...」
これだけ反省してくれれば次は問題ないだろう。
ジルニルに聞かれた事を詳しく説明する。
この冷蔵庫の使い方や他の人には内緒だと言う事。
衣服はその都度作ればいいと思っているのでクローゼットが使えなくなったとしてもなんの問題も無い。
我ながら完成度の高い女子部屋が出来たと思っている。
「どうかな?」
興味本位でジルニルがどう思ってるか聞いてみるとジルニルは自分のベット周りと比べたのか少し寂しそうな顔を浮かべる。
「流石です...女の子と言うのは難しいですね...」
「そんなことないよ、これは私が思い描いただけの想像だから...実際は違うと思う」
「ますます難しいです...」
「これから一緒に勉強していこっ!」
「はいっ!!」
私が笑顔を浮かべるとジルニルも笑顔を浮かべる。
「せっかくだからジルちゃんの部屋も可愛くしようよ」
「ジル...ちゃん...は...はいお願いしますご...リリィちゃん」
未だに引っかかる様な口調だがたしかに覇王にそんな口調で接しられたら困惑するわな...。
ゼルセラとかルノアールであればこうはいかないだろう。
何か合った時にジルニルを護れるようにとの考えもあったが少しジルに苦労を掛けそうだな...。
その後はジルニルの考えをそのままに部屋を作り変えた。
だが、妙に私の部屋に似通っている気がする。
「結構かわいいじゃん!」
そう褒めるとジルニルはどこか浮かない顔をする。
「どうかしたの?」
「やっぱり私には難しいです...」
やっぱり私のを真似したのか...。
だが、何事も真似から入るのだから最初はこれでもいいのだ。
どうせ徐々に自分色に染まってくるのだ。
色んな要素を取り入れ自分でそれをアレンジして使用する。
何事も先達が必要なのだ。
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