第11話 力の種類

今日は一玄とともに、水汲みと農作物の収穫を行うことになった。

「あの?どうして井戸があるのに水を汲みに行くんですか」

訓練場には井戸があって食事をする時などはそこから水を汲んでいた。

「あぁ、あそこの井戸水も元は川から汲んだ水を濾過してあそこに貯めてるんだ。水汲みは足腰の筋トレにもなるし一石二鳥だろ」

ニカっと眩しい笑顔を見せられた。

一玄はシロとは比べものにはならないほど、屈強な肉体を持っていた。三玄が速さやテクニックなら一玄は圧倒的筋肉だろう。一玄の周りで鍛錬を積んでいるものもやはり一様に筋肉がムキムキだった。


川に着くと他の隊員は皆手慣れた様子で水をくみ担ぐと訓練場へ走って戻っていく。

プルプルプル。

僕は肩に担いだ棒の前後にぶら下げられている二つの水桶の重さに訓練場に戻ってくると立ち上がる筋肉さえ残っていなかった

その間他の隊員達は川と訓練場をすでに3周以上していた。

「ははシロ坊はギブアップか」

誰よりも元気な一玄に声をかけられる。

「いえ、僕もお世話になっているのでまだ頑張ります」

正直足は自分のものじゃないかというくらい、重かった。一玄も他の隊員も誰も責めはしない。しかしここで休んでいたらよくないような気がした。

なんとか立ち上がると空の水桶を担いで川へ向かう。

はぁはぁはぁ。

足を動かし続ければ川へ着く。自分を追い越していく人たちを見つめながら、一歩一歩足を進める。

あっ。

急に地面が迫ってきた。

「おーっと危ない危ない」

声が聞こえると迫り来ていた地面から遠ざかっていた。

「大丈夫か」

助けてくれた人物の顔を見る。

「三玄さん」

「よかった。それよりまだ川の方誰かいるか」

僕は首を振った。

「いえわかりません」

「そうかい。んじゃちょっと失礼するよ」

そういうと三玄は僕の体をヒョイっと担ぎ上げ、川辺へ向かった。

「よしっみんな避難済みだな」

「あの何かあったんですか?」

「あれ?シロちゃん魔獣がでたって知らせ聞いてない?放送流したはずなんだけど」

訓練場だけではなく、訓練で使う場所には緊急放送のためのスピーカーが設置されていた。しかしフラフラだったからなのか全く放送が聞こえていなかった。

「すいません」

不甲斐ない自分にため息が溢れる。

「いや大丈夫だって。そのために俺たちの部隊がいるワケだし」


「そいじゃ一旦訓練場まで撤退するぜ」

三玄は魔獣が来る前に訓練場まで運んでくれた。

「シロちゃんは疲れてるだろうから訓練場内にいなよ。俺たちの戦い遠くから見てるといい」

そう言い残す三玄は訓練場の外で待機している仲間たちのところへ合流した。

「僕にも力があれば」

不意に漏れた言葉。

「シロさんは力がないのがもどかしいですか」

後ろから声をかけられる。

声の主は二玄だった。

「ワタシも筋肉も素早さもないんですよ。シロさんのように守られるばかりでした。だから私は一玄と三玄とは違い知識を磨きました。薬草を調べケガをした彼らに塗り、生のまま肉を食べようとする彼らのためにご飯を作り、彼らと魔獣が戦うのをみて魔獣の弱点を調べました」

二玄は視線をこちらに移すと優しい声で告げた。

「あなたはまだ自分のできることとできないこと。そして得意なことが見つかっていないだけなんです。だから自分のことを諦めないでください。きっと見つかりますから。だから焦らずいろんなことに挑戦してください」

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