第4話 学校

 なんやかんや時間がたっていて、もう、十一時を過ぎている。

 学校は終礼?が終わっているかもしれない。

 安全運転ギリギリの速度で車をかっ飛ばした。


 道がすいていたおかげか、昼の十二時前に到着出来た。

 教員専用駐車場に車を止め、商品を台車に積み、インターホンを押した。


 俺が、狐塚さんの注文でスーパーの配達物を届けにきたと伝えると、あー狐塚先生から聞いてますと、すんなり校内に入ることが出来た。



 先生らしき人に案内され、生徒の待つ演劇部の部室へ入る。

 生徒たちは俺を見ると一目散に集まってきた。


 今時の学生ってクールに構えてる子が多いイメージだったけどそうでもないらしい。


 やれ、お前誰だの、狐塚先生は?とか、タケダの店員じゃん!とめちゃくちゃ話しかけられた。


 モテキ到来?そんなわけないか。このぐらいの歳だと、何でも気になるもんなぁ……

 というか、商品どこに置いたらいいんすかねぇ……


 生徒に通路をふさがれ、途方に暮れているのを見かねた先生が、お仕事の邪魔しない!練習しない人はカップ麺無しっ!と生徒を散らしてくれた。


 蜘蛛の子を散らすように去っていく生徒たち。

 これはこれで、なんだか寂しいな。



 その後、先生に指示された場所にカップ麺を納品し、学校を後にした。


 とりあえず間に合ってホッとした。

 そうだ、店に無事に配達できた連絡しとこう。


 車を路肩に止めて、店に電話をかける。



「うっす。店長、今、配達終わりました」


「おーよくやった!ご苦労さん。じゃ、すぐ、戻ってこいよ!」


「え?そんなに忙しいですか?」



 電話から、やけに忙しそうに話す他の従業員の声が聞こえた。


 もうすぐ午後一時過ぎ。


 お昼のピークがいったん収まるから、従業員がお昼休憩をとる時間帯でもある。何人か休憩に行って人が足りないのかな?



「あのな、田中がやらかしたんだわ!」


「やらかした?」


「あぁ。商品誤発注で大量にパーティーパックとか酒が届いて倉庫は大パニックだ!笑うしかねぇ!ガハハハハッ!」



 ……笑ってる場合じゃねぇじゃんっ!!

 田中さぁぁぁぁん!!!!



「お前が何とかしてくんねぇと倉庫から商品がはみ出で仕方ねぇ!頼むぞ小路ぃ!」


「え?!俺に丸投げっすか?!勘弁してくださいよ」


「今すぐ、特売として出していくから、早く戻ってこい!」


「……うーっす」



 倉庫からはみ出る商品たちは見たくないが、彼女はどうなったのかも気になる。

 もしかしたら、ワンチャンまだ店にいるかも?


 少し期待してタケダに戻ると、そこに彼女の車はなかった。

 彼女は、業者に車の鍵を開けてもらって、すぐに帰ってしまったそうだ。



「あー帰っちゃったんですね……」


「仕事に遅刻するから、あらためてお礼に伺いますって言ってたぞ彼女。

 よかったな。また会える理由が出来たじゃないか」


「まぁ、いつ来るか分かんないですしぃータイミングずれたら最悪、来年まで会えないかもぉー?」


「小路くん、やけにネガティブだな。何かあったのか?」


「いや、田中さん。この状況で何かあったか?は無いでしょう?」



 俺は目の前の、誤発注で来たお菓子のパーティーパックの山を指さした。


 クッキーやら、せんべい、チョコ、ポテチの大袋たちで倉庫がはちきれそうだ。

 年末商戦のこの時期は、みんなで集まって食べる行事が多いのでパーティーパックは売れる。


 だが、それも成人のお祝いぐらいまで。


 次に待つ、主に女子のイベントになりつつある、バレンタインデーまでチョコは売れるとして、せんべいなどは勢いが落ちる。


 俺がざっと見た感じ、バナナのたたき売り並みに、お安くお客様に提供しないと、この山は無くなってくれないだろう。


 しかも、パーティーパックの箱は、一つ一つがこれまたデカいんだ。


 他にも別便で特売がくるって店長も言ってたし、気持ちがブルーにもなるさ。


 誤発注の犯人様は、俺が戻ってくるまで運送業者の方々に納品場所を任せっきりにして、ほかの作業をしてたみたいで、倉庫の配置はぐちゃぐちゃ。


 俺は今から倉庫の整理整頓をして、特売の商品出しと、約束してしまった田中さんの雑務の手伝いだ。


 やることが多く、残業になりそうで気が重い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る