SF界に現れた、奇才。

物語の舞台は、西暦2098年の地球から始まる。
極東の地を呑みこみかけた大災害を機に、世界は第3次世界大戦へと足を踏み入れていた。
そこへ突如、姿をあらわした異形生命体。
平和だった世界は、血の混じる風に吹かれ――。

――200年後。
かつて青く美しかったこの星は、虹色の油に覆われ、見る影をなくしていた。

物語は”前提”から衝撃と謎を与え続けてきます。
限りなくリアルな背景と疾走感のある戦闘シーン、事細かに貼られた伏線の数々……。

特にこの物語を彩り、支えるのは、作者様の深い知性と知識です。
濁流のような文体に、様々な分野の偉人が残した名言や、名作のオマージュ、心理学や生物学などの専門知識がポトリと落とされるんです。

これは伏線か、あれは伏線だったのか、”それ”はどういう意味を持つのか。
頭を掻き毟りながら何度も何度も読み込み、そして理解できた時。
我々は長年実験を繰り返し、ようやっと成功した時の白衣を着た研究者のように、空を仰ぐでしょう。

誰にも媚びない、知性の塊のような作品です。
読まないのは、もったいない。
一度手に取ることをおすすめします。