大いなる流れ

 音が鳴る。

 音が響く。


 ごうごう、ごぉーっ、ごぉーっ、ごぉーっ、ごうごう、ごうごう…………


 「そこ」には時間もなく、空間もなく、光もなく、闇もなく。ただの色と。

 流れがあった。それは、大いなる流れである。「そこ」が開闢かいびゃくして以来、ずっと流れ続けたものだ。

 「そこ」にあるのはこの流れと、水音のみ。



 人はそれを「  」と呼ぶ。

 



 流れはただ進む。いつか到達するであろう終焉へと向けて。それとも終焉へと還るというべきか。

 時に緩やかに、時に激しく。清流が激流となり、流れはただ進む。

 これこそ本質である。


 流れの中には様々な「いきもの」が住んでおり生と死を繰り返しながら流れと共に歩み続ける。終焉へと向けて。それとも終焉へと還るというべきか。


 流れには大小様々な大岩がある。時たま、流れが大岩に当たるとはじけ、中身が飛び出すことがある。


 ……ざっぱぁん!

 

 ほら、今も。


 今回の大岩は、2298年10月31日の17:05という名前である。


 はじけた中身の内、たったのみ、流れの中に戻らずふわふわと漂い始めた。


 彼は何処へいくのだろうか。

 少なくとも流れの中の「いきもの」は、知らない。

 流れの中の「いきもの」は流れ自体は知覚できても、眺めることは出来ない。故にこう表現するのだ。

 彼が、と。消失した、と。







 どうか誤解されなきよう。

 今、貴方が見ているモノは流れの記述に過ぎぬ。単なる「いきもの」の記述ではない。その視点は移り変わるのだ。







 ともかく、こうして勇者は消失した。魔王の軍勢が健在にも関わらず。

 だがこれは勇者の物語ではない。たとえ彼がいなくなっても残された者達はまだ生きている。故に物語は、続くのだ。

 これからも。


                               第7章 END



次章、最終決戦THE SECOND BATTLE前奏曲プレリュード


お楽しみに!


 


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