冬休み明け、降り注ぐ何かを見る ①
冬休みが明けた。
クラスメイトたちと挨拶を交わして、席に着く。乃愛は僕と過ごしたクリスマスやお正月のことをクラスメイト達に語っている。……うん、なんか男子生徒に恨めしそうな視線を向けられた。でもその後に呆れたような視線に語ったのは、乃愛の様子を見たからだろうか。
あと杉山もクラスメイトたちに沢山話しかけられていて、杉山も恨めしそうな目を向けられていた。ただ杉山に関してはそういう視線は気づいていないらしい。
勇者として動いていたのならば、殺気とかに関しては感じることが出来るけれどこういう恨めしそうな視線は分からないのかもしれない。恋愛事に鈍いというのはそういうものなのだろう。
というか、彼らの雰囲気が少し違うのだけど……クリスマスとお正月を得て、関係性が変わったんだろうか??
まぁ、僕にはあまり関係がないことだけれども。
「ねぇねぇ、博人。来月のバレンタインはどういうチョコレートが欲しい?」
「本人に聞くんだ?」
「うん。だって私が博人にバレンタインにチョコレートあげるのが当たり前だもん」
「そっか。でも乃愛がくれるものなら、どんなのでも嬉しいよ」
「ふふ、じゃあ腕によりをかけて作るね」
乃愛はにこにこと笑いながら、僕の方を見ている。
それにしてもバレンタインか。
去年は母さんからもらっただけだったけれど、乃愛からもらうことは今年は確定しているんだよなぁ。
「博人、友チョコならばいいけれど、本命は受け取っちゃ駄目だよ?」
「僕にそういう本命渡す人いないでしょ」
「博人の良さを知ったら皆、博人のこと好きになるよ?」
「それは乃愛の過大評価だから」
そういえば、一度目の時は確かサッカー部のエースの男子生徒とかが一番チョコレートをもらっていたんだっけ。
二度目は杉山がいるから、杉山が一番多いのかな?
乃愛とそういう会話を交わしていると、外で何かが降り注いでいるのが見えた。ぽたぽたと降り注ぐそれは、最初は雨かと思ったけれど……よく見ると雨ではなかった。何だか色のついた水?
「あれはっ……!!」
「まさか、あいつがこちらに!?」
うん、周りが違和感ないようになっているとはいえ、突然のそう言った思わせぶりな台詞にちょっと笑いそうになった。
それにしても杉山たちにはこの色のついた雨のようなものに心当たりがあるのだろうか。
「あれが降り注いでいれば、石化してしまう! 行くぞ!」
「ええ」
「はい」
「わかりました」
疑問点を全て杉山が言ってくれた。
あの色のついた水に関しては、何かを石化させるもののようだ。何も知らずに誰かが外に出たら石化してしまうってこと?
正直中々恐ろしいことだと思う。
それって固有能力なのだろうか、それとも魔法の能力なのだろうか。
僕には効かないかもしれないけれど……、それでもそういう石化するかもしれないものを浴びる気はない。
僕が帰宅するまでにこの石化の雨をどうにかしてくれればいいけれど……。
あとは昼休みも僕たちは屋上で食べたりしているので、その時に石化するのも困る。
「邪魔だね」
「まぁ」
「どうにかする?」
「杉山がどうにかするでしょ」
杉山たちが授業があるのに飛び出していったけれど、勇者とその仲間ならばこういう石化系の相手もどうにかできるだろう。
授業が始まった後も、その石化の雨のようなものは降り注いでいる。
その降り注ぐ石化の雨で、何人か石化しているのが目に見えた。
というか、校庭で杉山たちが戦っているのかドンパチと音が聞こえてくる。
さっきまでよく見てなかったけれど、この石化する雨みたいなのは学園でだけ降っているっぽい。杉山たちがこの学園にいるからかもしれないけれど、中々迷惑な話だと思う。
だって杉山と同じ学園に通っている生徒だからと、こういう風に色んな影響を受けているわけだし。
外を跳んでいる蠅の羽みたいなのをつけた男がいるけれど、あれが石化の雨を降らせているもの?
何だか悪魔っぽい見た目だけど、乃愛たちの世界だとやっぱり悪魔とかいたりするんだろうか。
乃愛はどちらかというと、好き勝手している邪神的な立ち位置だからこういう悪魔とも仲良いのだろうか。
そう思って乃愛をちらりと見れば、『仲良くないよ? 勝手に私を崇める人はいるけれど』と脳に直接語り掛けられた。
あの宙に浮いている人は、人型だけど……、悪魔的な立ち位置のものだと人型ではない存在も結構いるのだろうか?
人型とか、人型ではない悪魔とか……、そういうのに囲まれている乃愛を想像すると何だか不思議な気持ちになる。だけれども乃愛はそういう存在たちに囲まれた乃愛も想像が簡単に出来る。そういう悪役っぽい人達に囲まれている乃愛というのも、ある意味乃愛の一面のように思えるし。
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