はじまりの日 ②
高校にやってきた。
クラス表を見る。……うん、僕の中での去年と一緒。僕は去年、クラス表を見て問題がないなと思ってそのまま教室に向かったのだ。
そもそも僕は、基本的に人付き合いをそこまでしてこなかったため、周りの生徒たちのように一喜一憂することはなかった。というか、クラスが分かれようとも今世の別れとかそういうわけではないのに、よくもまぁ、こんな風に悲しんだり喜んだりできるなぁ……などと思ってしまう。
そういうのを横目に見ながら僕は小さくため息を吐く。
意味が分からないが、本当に僕は二度目の高校二年生をたどっているらしい。
そもそも周りのすべてがこの状況に何も違和感も感じていないようである。僕のように気づいているけど気づいていないふりをしているものもいるかもしれないが……、一定多数以上、そういう存在がいるならもっと騒ぎになっているはずだ。
今の時代は、ネット社会なので、そういうやつらがいたらすぐに広まっていくことだろう。スマホで検索をしてもそういったものは一つもなかった。
軽くかまをかけてみようかとも思ったが……うん、僕は友達がいないのでそういう存在もいない。そもそも僕以外にそういう存在がいないのならば、目立ってしまう。僕はこの学園で正直言って目立たない存在である。
下手に目立てば、今後の学園生活に支障をきたすだろう。
それでなんか人に話しかけられるのも正直、面倒だ。
うん、やっぱりまず僕が本当に一年を繰り返そうとしているのかの検証をしてみよう。
まだ家の中で買ったはずの漫画がないぐらいしか分かっていない。
もっと本当にそうなのかを確認しないと。そういえば、僕にとっての去年――有名人の不祥事もあったんだよな。僕の記憶の中では、5月ぐらいにその不祥事があったから、それも一つの目途か。
でも僕の中の記憶と、これからのすべてが一致するわけではきっとないだろう。
人の行動一つですべてがかわっていくはずなので、僕のこれからの一年が全て一致するわけではない。なるべく普段通り過ごすけど、正直一日一日どのように過ごしたか事細かに僕は覚えているわけではない。
とはいえ、僕の行動一つで有名人たちの行動がかわったりはしないだろう。
それにしても、例えばライトノベルとかの登場人物だと巻き戻ったと気づいたらその一年を変えようとしたり、心残りを解消させようとしたり――そういうことをしていたように思える。
だけどまぁ、僕はそういうのは興味がない。そもそも本当にこの世界が巻き戻っているというのならば、その理由がどこかにあるはずで、それはきっと僕のような一般人ではどうしようもないものが関わっているだろう。
……やっぱり目立たないようにのんびり過ごそう。
楽しみにしている漫画とライトノベルの続きが一年以上先というのだけがっかりだが、それ以外は何も変わらない。寧ろ大学受験まで一年延びたと思って、勉強だけ少し力を入れようかな。
そう考えながら僕は高校二年生の教室へと向かった。
その教室の前の方――そこが僕の席だ。というか、去年と変わらない。後から席替えもあるだろうが、基本は名前順なのだ。僕は名前順ではやいほうなので、いつも前の方だ。
そういえば――と僕は席に着いた後、思い起こす。
そしてちらりと、視線をとある席に向ける。そこの席は、杉山ひかるの席だ。一年生の頃から目立っていて、いわゆるリア充と言えるべき人間だった。しかし、杉山は――僕の中では去年の記憶では、行方不明になっていた。
それはもう騒ぎになっていた記憶がある。
人が一人、行方不明になったのだから騒ぎになるのも当然で、僕もクラスメイトとして記者から質問を受けた。ぶっちゃけ、関わりなんて全くないクラスメイトの事を質問されても困った。ちなみにもちろん、そんな僕の返答ではなく、杉山と仲よくしていたクラスメイトの発言がテレビで匿名で放送されていた。
結局、杉山は一年経っても帰ってこなかった。
僕は杉山に何があったのだろうかという疑問を抱いていたものの、特に親しいわけではなかったのでそのままスルーしていた。
今回も同じ繰り返しならば杉山は行方不明のままなのだろう。
そう思いながら僕は教師がやってくるまでの間、本を読もうと、鞄からカバーをつけたライトノベルを取り出す。これはもう去年の僕が読んでいるものだが、楽しいので再読することにしたのだ。
楽しんで読んでいたら、がらりっと教室の扉が開いた。
そして教室が騒がしくなる。
僕はそちらに視線を向けて驚いた。
「ひかる、遅かったわね」
「おはよう、杉山君」
――そこにいたのは、杉山ひかる。
去年の軸では、行方不明になっていた少年だった。そしてその後ろから、この現代日本ではまず見ない三人の存在がいた。
一人は、金髪の縦ロール。
一人は、とがった耳を持つ少女。
一人は、腰に剣を下げている。
……明らかにおかしい。何で日本にこんなコスプレ集団がいるんだ? 思わず声を上げそうになった僕は悪くないと思う。
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