星にお願い☆

森原明

星にお願い☆

第1話これは、俺の日常なんだけど


「覚悟しな?瞳ぃ」


 今どき非常に珍しくなったリーゼント、学ランスタイルの不良グループに囲まれ、俺はそれなりにピンチな状況にいるように見える。


しかし、実はそうでもない。


 この連中…俺がこの学校に通うようになってから俺に絡んでくるようになったのだけれども……律儀と言うか、ある意味礼儀正しいと言うか……必ずちょっかいを出しに来るのは学校が終わった後、しかも、ほぼほぼ下校中に限り、という徹底ぶりで。


 しかも驚くことに、学校内でこの姿になるのも昼休みと放課後、下校時だけという…。

 もはやクラブ活動じゃん?とツッコミたくなる連中なのだが……。


「懲りねえなぁ、あんたらも。毎回何度も言うけどさ、無理だから。いい加減諦めてくれよ?」


奴らの目的はただ2つ。


1つは……


「そうはいくか!俺達にはおめえしかいねえんだよ!分かれや!」


「分るわけ無いだろ?何で俺がお前らの身勝手な要求に応えてやんなきゃなんないんだよ?」


「俺達の熱い想い、受け止められるのはおメエしかいねえんだ!頼むからこの想い、遂げさせてくれえっ!!」




・・・・・あ〜…。


 い、一応勘違いされるといけないので断っておくケド、俺はまず、ちゃんとした普通の男子だ。


 見た目には女性に非常に近いらしいし、声もまあ、若干女性寄りに高めではあるけれど、間違いなくついているもんはついているし、この話し方でも分かる通り中身もオカマとかじゃなく、完全な健全な男子だ。


 連中が、なんか無理やり女子に向かって迫っているような話し方なんだけど、そうじゃあ無いんだ、な。


「おめえに勝たなきゃ、彼女は俺達に会ってくれねえ!だから、何も言わずに、避けたりせずに素直に俺の鉄拳を受けて倒れてくれい!」


 奴らの切なる願いは、俺を倒すこと。

そして、そんな条件を叩きつけた物騒な人物ってのは…



目黒 美和



……俺の姉さんだ。


彼らの目的2つ目は、姉さんに会うことだった。



俺の姉さんは、総合格闘界の至宝と言われる天才格闘家であり、今や日本のみならず世界で知られる存在となっている。


通り名は “格闘世界の楊貴妃”


 異種格闘世界大会で優勝してからというもの、テレビの出演もするようになったが…それよりも化粧品のコマーシャルなどに引っ張りだこになっていて、男女問わずの人気ぶりに本人が一番閉口している訳だけど。


この連中は、そんな彼女の人気ぶりのパロメーターの中の1つ、っていうわけ。


 この不良のリーダー…名前は忘れたが(そもそもそんなミーハーなツッパリ、覚える気にもなりゃしない)そいつがメチャクチャ姉ちゃんに一目惚れしちゃったらしくって。


他にも何人か、そんな熱狂的ファンが我が家……滝川流合気道、目黒道場に押し寄せてきたとき、姉ちゃんが半分冗談でいったセリフが原因なんだよな〜…。



「…私……強い殿方が大好きなんです。私より強い…とは申しませんが、せめてそこの……私の愚弟、瞳に勝てる方がいれば、その時考えさせて頂きますわ☆」



 テレビの取材班の前で、百合の花を咲かせたような素晴らしい笑顔を見せてそう宣っちゃったからさあ、大変。


 しばらくの間、俺は見知らぬ相手から夜討ち朝駆けで戦いを申し込まれる事になってしまったのだった。


半年が経って


 …流石に俺に戦いを挑む勇者様は随分と減ったけれど、コイツラだけは負けても負けても挫けずに俺に挑み続けている…というわけで。


あんな、はたから聞いたら怪しいセリフをぶつけて来ているのにはそんな訳がある。


 ・・・ま、だからといって負けてやる気はコチラにはミジンコの毛先ほども無く。



 この喧嘩…いや、一応彼らのために果たし合いと言っておこうか…は、10分と経たず終了した。


 ぱんぱんと手を叩いてホコリを払った俺は、地べたで這いつくばり倒れている連中の中のボスに話しかけた。



「……なあ、アンタさ…そんだけ根性があるなら直接当たって砕けてみたらどうなんだ?姉貴の言うトコロの “強さ” ってのは・・・」



「勝者が敗者に情けをかけるんじゃねえ!」


 それだけいうと、ヤツは白目をむいて動かなくなった。



全く…こんだけ潔いんなら、素直に姉ちゃんに話しかけりゃあ良いのにな。


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