新しい体

創意工夫 

第1話 

「おはようたき。」

「おはよう母さん…」

俺の名前はいずみ滝、とてもみずみずしい名前だがそれに逆らうように見た目は酷い。

身長が低く太っている、さらに顔はニキビだらけでひどい有り様だ。

普段は顔を隠せるメガネと大きめのマスクをつけている。

「いってきます」


「おーい、チビデブちゃん。パン買ってきてよ。もちろんお前の奢りな。」


登校時にいつも絡んでくる男がいる。


「そんなお金ないよ…」

「なんで金ねえんだよ。じゃあいいよ、火炙りの刑な。」

俺をいじめているのはさかきともる、榊はバスケ部に所属していてもちろん背が高いし、ルックスもいい、スクールカースト内では上位に上り詰める男。

榊は俺のことを毎日のようにいじめ、酷いことをする。


「いっそ死んだほうが楽だよな…」

「じゃあ死ねよwwwwww」


言ってはいけないことくらいわかるだろう。

もし、俺が自殺でもしたならいじめをしていた榊が1番に疑われる。

しかし、榊は俺の前以外では性格のいいイケメンを演じていて信じる者は誰もいないだろう。



キキーッ!!!


車のブレーキ音が聞こえる。

あぁ俺はやっと死ねるんだ。

これで苦しみから解放される。



ーーーーーーーーーー



「はぁはぁはぁ…」

聞こえるのは俺の荒い息遣いだけ。

見えたのは自分の部屋の天井、やはり夢オチである。

神様は俺が死ぬことを許してはくれない。


「おはよう母さん」

「あっ滝、起きたのね、おはよう。」


廊下からリビングへ母に挨拶をする。

さっきと同じように、母と顔を合わせないまま洗面所へ行き、顔を洗う。


「ーーーーっ!!!」


おかしい。

いつも鏡越しに見えるのはニキビだらけで醜い顔のはず、今見えているのは何だ?

高い鼻に綺麗な肌、揃った白い歯が口元から見える。


寝ぼけているだけだろうと思いそのままリビングへ向かった。


「あんた誰!?どっから入ってきたの!早く出ていきなさい!」

「母さん!俺だよ!滝だよ!」

「滝なわけないじゃない!本当に滝だというのならもっと醜いはずよ!」

母の口からそう聞こえたのはショックだった。

自分が滝だと伝えても信じずに母は投げれるもの全て投げ俺を追い払おうとしてくる。


俺は走った、家を飛び出て暗い路地裏に隠れた。


「何が起こっているんだ?俺は俺じゃない、母さんも俺が俺ではないことがわかっている。とにかくどうすればいいんだ。」


解決策もなく、悩みながら日は少しずつ沈んでいった。


「君、パジャマ姿でどうしたの?」

警察の姿をした男が話しかけてきた。

「なんでもないです。」

「なんでもなくないでしょ?どうしたの?」

「本当になんでもないんです!」


また走った、警察の男も後を追って走ってくる。


前までは数m走ってすぐバテていたはずなのに、走っても走っても体力が減らない、むしろ力が湧いてくる。


大きい川を渡る橋から飛び降り、新しい体の身体能力を使いなんとか着水した。


その後は食料になるものを探した。

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