第27話 陽だまり ~山下公園~

海鳥が鳴いていた。

ここは山下公園。

海に面した港にある公園だった。

土曜日の昼下がり、多くのカップルが公園を賑わせていた。

心が躍るようだった。

青年はそうした気持ちを悟られまいと、無口になった。

青年の外面は、静かな湖のようだった。

内面では、波濤がしぶきを上げていた。


海は平和だった。

時折、波の音が耳に届いた。

二人は歩いていた。

日差しが眩しかった。

青年は夜を待った。

夜にしか月は見えない。

こんな一事をもって、青年は、真実は夜にしか現れないと信じていた。

夜の月だけが、このいびつな青年を照らしてくれると信じていた。


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