第2話 邂逅

「お久しぶりですね、悠貴さん」


若い少年特有の、瑞々しい潤いのある声が青年の耳に届いた。

青年は、この少年の女性的な響きを持つ、優しいアルト・ボイスを愛した。

青年は中性的なものが美しいと考えていた。

美とは超越である。カテゴライズ不能な突然変異である。

青年はたまに、『おれはもしかして、gayではないのだろうか。俺はこの少年の中に女を見て、それを愛でているのではないかしら。おれは異性愛にコンプレックスを抱いた、異常な異性愛者ではないだろうか。』と考えた。

青年は苦悩から逃れたかった。

「俊ちゃん。こんばんは」


星空が美青年と美少年の邂逅を祝福するように輝きだした。

二人はベンチに腰掛けた。

「ねえ悠貴さん、どうして愛は失われてしまうの。どうして多くの愛を得られる人と、まったく愛に愛されない人がいるの。」

「それはまた、根源的な問いだね。おそらく、愛は失われはしないんだよ。ただ、形を変えるだけなんだ。愛の形が時間とともに変わって、それを失われてしまったと感じるだけなんだ。たとえば、ぼくらの愛はいわゆる普通のカップル同士の愛の形とは違うだろう。でも、ぼくたちは確かに愛し合っている。愛にはきっと、様々な形があって、ぼくらにできることは、愛の存在を認識することなんだ。」

「ぼく、愛ってよく分からない。悠貴さんが僕を愛してくれるのは分かってる。でも、それが不確かだから、怖いんだ。人は永遠に生きられない以上、愛も永遠には続かないんだと思っちゃう」


青年は少年の手を優しく握り、接吻した。

それは慈悲の接合であった。

少年の唇は、わずかな緊張を帯びたが、やがて脱力した。

「俊ちゃん。これだけは覚えておいて。愛は美しさの衰えない、唯一のものだということを。」

美少年は、青年の彫りの深い顔に魅入った。

夜風が、木々を揺らした。

時間は流れ行くものだが、この夜の公園には、永続の感覚があった。

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