第11章 心機一転
第41話 増築開始
今日は僕と美愛が居残り、ちひと結愛が漁業にお出かけ。
「昨日、自転車で帰るついでに私の土地に寄って網をセットしてきたんですよ。だから今日は魚捕り作業で結愛ちゃんを借りていきますから」
「行く!」
この状況で結愛を止められる者はいない。
実際魚が一杯獲れるのは楽しいらしいし。
ただ僕や美愛は別の仕事がある。
「それじゃこっちの作業を進めておくから」
「行ってくる」
「結愛をお願いします」
2人が船で出て行ったのを見送った後、僕と美愛は作業開始。
僕はまず水路の見回りから。
美愛は漬物作業だ。
美愛によるとこの前作った漬物は漬けてから4日目で出荷可能らしい。
そして必要な醤油麹粕は既に十分な量がある。
「今度は樽に入れて漬けた状態で出荷ですよね」
「ああ。向こうからそういう要望があった。包装しなくてもいいから数が欲しいって」
「わかりました。それでは作っておきますね」
そして僕はまず日課の水路見回りへ。
今日は1人なので水路に取り残された魚捕りはしない。
どうせ魚はちひと結愛が沢山とってくるだろうから。
あと麹作りに必要な海藻、イーダも集めて貰うよう頼んでいる。
向こうの方が海藻が多いと言っていたから。
今日は水路に
補修が必要な場所も無さそうだ。
養殖池の方も確認する。
細長く作った池も移植したオーラムも問題ない。
日中の暑い時間帯は潮位が高いから川と海から水が入ってくる。
だから温度が高くなりすぎる事もない。
その辺の具合も問題は無さそうだ。
ただ此処の生物、成長速度が地球よりやや早い気がする。
気候の温暖さが原因ではないだろう。
この方法は元々熱帯や亜熱帯で行う養殖方法だから。
予定ではあと2月かかるつもりだったのだが、どうやらあと1月も経たないうちに収穫が可能な気がする。
そうしたらまた忙しくなるだろうか。
そんな事を考えながら拠点へ戻る。
美愛は味噌小屋でヘイゴの芯を乾燥させながら麹粕と樽に詰める作業をしていた。
「どれくらいかかりそう?」
「とりあえず2樽なので、午前中には何とか」
「わかった。それじゃ反対側から工事をするから」
「ありがとうございます。こちらが終わったら声を掛けます」
そんな訳で僕は今度は作業場へ。
まずはトイレの改造からだ。
増築計画については昨晩、4人で話し合って決めた。
東側からいくと、まず味噌小屋はそのまま。
アルミコンテナは収納し、代わりにちひが持ち込んだユニットハウスを組み込む。
この場所が今後リビングとなる予定だ。
アルミコンテナよりユニットハウスの方が少し大きいのでその辺は調整して現物合わせ。
作業場は基本的にそのまま使うが、キッチン部分はちひが持ち込んだ業務用シンク&作業台を正式に固定。
今のトイレは廃止し、やはりちひが持ち込んだ屋外用トイレハウスを新たに組み込む。
風呂は当座はそのままで、そのうち大きな浴槽を自作予定。
そしてその先に個室を4部屋増築。
これで怪しいごった寝空間とはおさらばだ。
1日で全て終わるような作業ではない。
今日はコンテナとユニットハウスの入れ替え、作業場の作業、そして出来れば個室部分の外壁作業をやる予定だ。
ただ現在、美愛が味噌小屋を使っている。
だから隣接しているコンテナを動かす作業は出来ない。
そんな訳で作業はトイレから。
やる事は簡単だ。
① 作業場のトイレ部分の屋根を外す。
② トイレの部分を少しだけ掘り下げ、簡易タンクに開けた穴と下に掘ったボットン部分への穴が一致するようにあわせる。
③ 屋外用簡易トイレ本体を埋め込む。
以上だ。
これでトイレが簡素かつ危険なストレートボットンタイプから洋式になる。
なお匂いはいまのところ問題無い。ボットン部分をかなり深く大きく掘った事、かつ発酵促進の為細かく刻んだ葉や枝をある程度入れて対策した事が効いている模様だ。
埋め込んだ部分の隙間を石灰交じりの土で塞いだらトイレ作業完了。
これでトイレに扉がやっと出来た。
なお風呂は扉がない。
でもこれは壁でのぞけないようになっているから問題ないとしておこう。
次は流し。
こっちは既に排水まで施工済み。
だから壁と隙間が無いよう固定するだけだ。
さて、コンテナ部分の作業が出来ないので、次は個室部分の作業になる。
玄関から外へ出て、草地を家の壁に沿って歩いて端へ。
この部分は以前、外壁に使う土を掘り起こした分の堀があった。
しかし浜に近い側の堀は飛んできた砂に埋もれ、今では少し低くなっているだけの状態だ。
こっち側は虫や爬虫類が少ないのでこのまま放置している。
さて、家の端まで来ると、こちら側から南側へと向かう壁と堀がある。
雨のおかげでそこそこ水が溜まっている状態だ。
この右側、方向で言うと西側に個室を建てる予定。
だからこの部分の堀は埋めなければならない。
取り敢えずは砂浜の砂で埋めてしまおう。
アイテムボックスを使って砂を移動させ、埋めていく。
中にはヤゴっぽい生物やボウフラっぽい生物もいるようだ。
どっちも見た目にあまり嬉しくない姿形なので見ない方針で。
次は予定区域の刈り払い。
刈る事そのものはベクトル操作魔法で簡単。
ただ刈ったヘイゴやシダ類を運んで整理するのは面倒くさい。
今回は屋根材に草や枝を使うし、幹は勿論中の芯は漬物用に使う。
若芽も漬物用に確保しなければならない。
幸い屋外作業場は見える位置にある。
だから移動しなくても出す事が可能だ。
つまり収納して出して収納して出して……
根等はまだ残っているが、何とか更地に出来たところで声がかかった。
「和樹さん、おやつにしませんか」
確かに少し疲れたな。
ここで休憩といこう。
今日のおやつは久しぶりのシュークリームだ。
ふと気になったから聞いてみる。
「そう言えば結愛達はおやつも持って行ったっけか」
「午前と午後のおやつ用にシュークリームとプリンを予備含めて持って行っています。あと昼食のサンドイッチとお茶も」
「なら問題無いか」
思った以上に準備万端だった。
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