第16話 無念無想!

 さて、女子高生の生着替えが気にならない事もないが、とりあえず別の作業。

 夕食の準備だ。


 2人が拠点内で着替えているから外の作業場で。

 そう言えば木豆を水に晒していたなと見て思い出す。

 取り敢えず水を替えておこう。


 木豆作業が終わったら屋根のある部分にテーブルを出す。

 更に鍋やまな板、包丁等をその上に出して。


 主食はイロン村で買ったパンでいいだろう。

 おかずはアルパクスのステーキが簡単でいい。

 魔法調理の場合は煮物より焼き物の方が楽だ。

 魔法を起動し続ける時間が短くて済むから。


 サラダは蔓芋のポテトサラダで、中にヘイゴやトルデアの新芽を茹でたものとサラダチキンもどきを入れる。

 味付けはマヨネーズと塩でいいだろう。

 これで材料がぼぼヒラリア産の夕食が完成だ。


 美愛と結愛は海で遊んでいる。

 すぐ深くなる事がわかったらしく、海に入っても岸のすぐ近くまでにしているようだ。

 今のところ危険そうな動物の接近はない。


 さて、夕食も作ったし僕も休憩モードとしよう。

 まだ2人は遊んでいるようなので夕食をテーブルごとアイテムボックスに収納する。

 代わりに出したのは組み立て済みのプール。

 そう、風呂だ。


 2人も海で遊んでいるし、今日は山の中を歩いている。

 僕も汗をかいたし軽く筋肉をほぐしたい。

 魔法でも疲れや筋肉痛はなおせるけれど、風呂の方が快適だ。


 風呂の準備と言っても魔法でお湯を入れるだけ。

 この程度なら大した魔力も必要ない。

 あっという間に準備完了。


 それでは風呂に入ろう。

 ただ2人がいるし全裸ではまずい。

 一度拠点の中へ入り、サーフパンツに着替える。


 拠点から出たら2人が海から戻って来ていた。

 どうやら僕が風呂を用意しているのに気づいたようだ。


「このプールで遊んでいい?」


 確かに見かけは大きいプールそのものだ。

 しかし結愛、これは違う。


「これは風呂代わりだ。まだきちんとした風呂を作っていないからさ」


「なら結愛も今日はもうお風呂に入りましょうか。今日から此処がお家だから、明日も海で遊べるからね」


「わかった」


「和樹さん、それでいいですか」


「ああ」


 確かにそれなら湯が冷めても足りなくなっても問題無い。

 それにしても結愛、聞き分けが良くていい子だなと思う。


 なら2人の風呂道具も出さないとなと思って気付いた。

 椅子も洗面器も1つずつしかない。


 椅子は小型の折り畳み椅子を持ってきたからそれを1つ出そう。

 僕は正座でいい。

 洗面器は大きめのボールで代用しよう。

 洗えば問題ない筈だ。


 タオル、洗面器、大きめボール1個、風呂用椅子、折り畳み椅子、ボディシャンプー、リンスインシャンプーを出す。


「風呂に入るならこれを使って。あとシャワーは無いから洗面器で風呂のお湯を汲んで使う形で。お湯の温度が暑かったりぬるかったりしたら言ってくれ。調節するから」


「ありがとうございます」


 次に街に行ったときに購入しておこう。


 さて、それでは僕ものんびり身体を洗うとしようか。

 正座して自分用のグッズを出し、洗いはじめようとして。

 そして僕は何となく2人の方を見る。


 な、何故だ! 何故2人とも水着を脱いでいる。

 現在は結愛を脱がした後、美愛が脱いでいる最中だ。


 考えてみれば当然か。

 2人の水着は学校指定によくあるランニングとスパッツがくっついたような形で露出が少ない物。

 身体を洗うには適さない。


「ごめん、僕は後で入るから」

「大丈夫です。ここは私達3人しかいませんから」


 僕があまり大丈夫ではない、なんて事は言えない。

 意識しているとバレてしまう。


 結愛は大丈夫。

 幼稚園児や小学生なら全裸でも気にならない。

 エロ漫画や妄想ならともかく現実はそうだ。


 ただ女子高生は流石にまずい。

 しかも美愛、小柄ながらもしっかり胸もある。

 どうやら着やせする方の模様。


 別に注視している訳ではない。

 僕は警戒魔法と偵察魔法をほぼ常時起動している。

 だから少しでも意識すると見えてしまうのだ。

 僕自身から見えない筈の場所であっても。


 さっさと身体を洗って、ささっと湯に浸かって出るしかない。

 それまでは出来る限り周囲の警戒だけに意識を向けよう。

 そう思いつつ身体を洗い始めた時だ。


 美愛が近づいてくる。

 何故だ、意識しないようにしていたのに!


「和樹さん、お背中流しましょうか」


 いや、雇用主だからと言って気を遣わなくていい。

 今は家族みたいなものだから。


「大丈夫。それより結愛を洗ってやってくれ」


「結愛は1人で洗えますから」


「僕も大丈夫だから」


 警戒魔法で思い切り丸見えだ。

 そして見えてはいけないところほど見てしまう訳で。 

 サーフパンツを穿いていてよかったと思う。

 気付かれてはいけない部分が大きくなってしまった。


「わかりました」


 取り敢えず一難去った。

 脳内でちひにため息をつかれている映像が流れる。

 いや、これは不可抗力なんだ。

 思わずそう脳内で言い訳。


 しかしまだまだ困難は続く。

 長い髪を洗ったりする分、どうしても僕が洗い終わるのが先になる。

 だから一足先に湯船に浸からせて貰った。

 2人が入ってきたら出るつもりで。


 このプールはかなり大きい。

 それでも3人で入ると距離はそれなりに近くなる。

 そんな危険は避けるべきだと判断した訳だ。


 美愛が自分の髪を洗い終えて、そして結愛の髪も洗ってやって。

 そして入ろうとしたので僕は一足先に出ようとした。

 しかしその時、結愛に言われてしまったのだ。


「一緒にはいるの、嫌?」


「いや、お湯があふれるかなと思って」


 とっさに考えてその言い訳が不味かった。


「洗い終わったから問題無いですよね」


 確かに結愛の言う通りだ。

 仕方なくそのまま僕も浴槽へ浸かりなおす。


 中央が結愛ならまだ救いはあった。

 しかし結愛、遊ぶためには端がいい模様だ。

 真ん中が美愛になる。


 裸の肩が近い。

 互い違いでお互い向き合うよりはましだろうとは思うのだ。

 それでも女子高生の裸がすぐそこにあるのは不味い。

 気を抜くと触れてしまう位だし。


 というか美愛、こっちに寄っていないか?

 気のせいだよな。


「ところで和樹さんは彼女はいないんですか?」


 この状況でそんな事を聞くのか!

 この年で童貞だぞ文句あるかとは勿論言えない。

 僕にだってプライドははある。


 ついでに言うとちひは過去形でも現在形でも彼女では無い。

 あくまでサークルの後輩だ。


「一人で移住して来た事で察して欲しい」


「すみません」


 そこで謝らないでくれ。

 悲しくなる。

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