ノンギフテッド

タウロラ

第1話 序章 【ギフト】

『私は、才能が見える』

 人はみな、1つだけ【才能】や【ギフト】と呼ばれるものを所有する。しかし、それは認識することができない。誰も自分自身が持つ才能や他人が持つ才能がなにか分からない。

 私…渡名聖良わたなせいらが持っているギフトは、その常識を覆すものであった。


 私には幼い頃から人の頭の上に文字が見えていた。いったいそれがなにを示すものなのか分からなかった。というより、これはみんなが見えているもので私だけではないと思っていた。当時、読めない漢字で書かれているものを両親に訪ねたときそれが私だけに見えていることが分かった。なんとも面白味のない気づき方である。


 ある日テレビを見た。そこにはテニスで長年世界ランク1位に君臨している人が映っていた。その人の頭上には、〘テニスの試合に勝利する〙と書かれていた。

 その人は、テニスで勝利するというギフトがあったのだ。その与えられたギフトを教えてもらうわけでもなく、幸運にもその才を伸ばすことができたのだ。そういった例は数多く存在する。いわゆる天才というやつだ。その人たちは、運よくそのギフトに合致した行動をとることができたのだ。


 というわけで私は色々調べてみた。時には、友人をさりげなくギフトが待つ方向へ導くように働きかけたこともある。まあ失敗したが。成功しても、変に恩を持たれたりするのもなんか嫌だったからまあいいんだけど。すごく暗い思考だと思う。

 結果、私のギフトは〘他人のギフトを見る〙であることが判明した。なぜ他人のかって?鏡に私のギフトは映らないから。


 詰まる所、私はこのギフトのために他の才能は潰されてしまったようだ。まあギフトがなくても努力次第で能力はある程度獲得できるわけであまり問題はなかったのだけれど。ただ、世界を獲るほどの能力は得られないってだけで。勉強もできる運動もまあできる。泳げるし。たまーーーに告白されるし、ルックスも恐らくそこそこいいのであると信じたい…ってなにを思っているんだか。


 そんなことを考えるくらい黄昏られるのが放課後の屋上というものである。夕焼けは眩しいし、日に焼けそうになるが嫌いではない。上から人を見て、そのギフトを眺める行為というのは何物にも代えられないものである。


 私が通う高校は偏差値が高い。みんな頭がいい。頭がいいと運動はできないと思われがちだが、なぜかみんな運動もできる。どうも勉強と運動はリンクしているみたい。朝練をしても授業中寝ている人はいない。メリハリがやはり肝心なのだろうか。私は勉強だけで精一杯なのになあ。そういう優れた人がたくさんいるところには、本当に様々なギフトがある。ギフトはオンリーワンというわけではないことは過去に調べている。唯一無二の才能の人もいるかもしれないけどね。全人類を見たわけではないし。

 しかし、そのギフトに合致した努力をしている人はいなかった。私が眺めている陸上部に惜しい人がいるぐらい。

「走り幅跳びじゃなく、走り高跳びのほうが向いているよー」とつぶやいてみる。

 まあ頑張っている人にそんなことをいうとキレられるから言えないよね。


    この【ギフト】を生かしてみたい。


 私は常にこの欲求に駆られている。私と同じギフトを持つ人は今のところ見たことがない。インターネットで探そうと思ったこともあるけど、特定されるのが怖いから辞めた。もしいるなら教えてほしい。このギフトをどのように生かしているのか。何年も何年も考えた。わからない。誰か教えてほしいな。ここ学校だよね。


 ・・・さて帰ろうか。私の世界に今日も変化はない。とても素晴らしいことだ。

 


キィ・・・・


『ん?誰だこんな時間にこんな場所に。』


 屋上の扉が開いた音がした。これが日常の崩壊音なのか?なんて期待を込めながら音のする方へ視線を向けてしまったのであった。

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