【短編】友達の証明

Fa1(ふぁいち)

第1話 僕のこと

 夏休みが明けて、数週間が経過した。僕はいつもの公園の木陰から、無邪気に走り回る子供たちを眺めていた。僕より一つか二つ下の年齢くらいの彼らは、砂場に行ったりシーソーに行ったり、休む間もなく遊び続けていた。

 僕は今年六年生になる。もうすぐで中学生になる僕は、彼らのようにただ走り回って楽しめるような子供ではなくなっていた。歳を重ねるということは、少しずつ大人になっていくということ。それは僕にとってはあまり嬉しいものではなかった。

 ある日を境に両親は僕に冷たくなった。多分、もう子供じゃなくなる僕に対して「大人な生き方」を求めているんだと思う。僕は両親が好きだ。だから、大人にはなりたくない。

 「大人な生き方」は僕にとってはあまりにも厳しいものだった。まず、誰からも口を聞いてもらえない。向こうから一方的に話しかけてくることはあるが、僕からの言葉には耳を貸してくれない。そして、お米の量も少なくなった。おかずも冷めたものが出てくる。


もしかしたら僕は「虐待」をされているのかもしれない。


それでも僕は、両親が好きだ。内気で情けない僕にも優しくしてくれて、僕がテストでいい点を取ればたくさん喜んでくれた。悪い点を取ったときだって「また次頑張ろう」と笑って言ってくれるような人だった。


またあの頃に戻りたい。大人にはなりたくない。

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