第5話
「藪の中、と言っていたんですよね?」
若い武士が言えば、他の武士たちは頭を上下左右に振った。若い武士が問いかけているのは、女の足が見つかった場所についてである。武士たちは曖昧に返答しつつ、困ったように目を見合わせた。
「だとしても、探して見つかるものでもないだろう」
「探さなければ見つかりません。謎の男の言葉を信じるのも癪ですが、手がかりはないんです。足が藪の中にあったのなら、他の部分だってその近くにあるかもしれません」
「あったとして、もう腐っているんじゃないか?」
「それなら好都合。臭いで分かりますからね」
「それなら近くを通った人間がとっくに気づいているだろう。それに、藪の中と言っても範囲が広すぎる。止めておけ、意味がない」
「むう」
若い武士は、不機嫌そうに頬を膨らませた。しかし次の瞬間にはにっこりと笑顔になる。
「個人的に、休みの時に探しに行くのは良いですよね?」
武士たちは嘆息した。若い武士は、何が何でも諦めない心づもりである。そういう奴であることを、武士たちはみな知っているのだ。
仕方ない、と武士は呟いた。
「せめて、陰陽師が来た後で行けよ」
「ああ、そういえば今夜ですね」
若い武士は、「意味なんてないのに」と小さく呟く。
「何をするかは分からんが、今日まではじっとしておいた方がいいだろう」
「私だって、何も今からだなんて思っていませんよ……それに、陰陽師は気になりますから」
若い武士は続けて言った。
「聞いてみたいこともありますしね」
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