第18狐 「真夏の恋模様」 その3

 食べ放題のお昼ご飯を皆で楽しそうに食べています。

 相変わらず「お茶だ、お水だ」と給仕をして回る白馬君に、ベタベタと付いて回る蛇蛇美達。

 紅様は食べ過ぎて身動きが取れなくなった美狐様を横目に、航太殿の目の前に陣取られ、胸元に航太殿の目線を釘付けにしています……。


 陽子ちゃんは、上手に食事を盛り付けて、木興様の元へと運んで行きました。

 木興様は上機嫌で陽子ちゃんとお話をしています。

 流石はモテモテ南国女子陽子ちゃんと言ったところでしょうか。

 木興様のハートも鷲掴みの様です。


 海辺の方を振り向くと、静様がワンピース型の白い水着で、相変わらずアンニュイと言った感じで横たわられています。

 それでも、白馬君が持って行った、ブルーハワイのかき氷を少しずつ食べている様なので、もう大丈夫なご様子。

 スタイルも良く、長い黒髪にしとやかな色気を漂わせている静様。

 そんな静様を周りの男の子達も気になる様で、白馬君に続き食べ物を足繫あししげく運んでいます。


 そんな和やかな雰囲気の中、私達が食べ過ぎで一休みしている隙に、航太殿が紅様に連れ去られてしまった様なのです。

 航太殿が居ない事に気が付かれた美狐様が慌てて後を追われました。


「おのれ紅め……よもや不埒ふらちな真似をするつもりではあるまいな!」


 お怒りモードの美狐さまの後を、私と華ちゃんも付いて行きたかったのですが、お腹が重たくて無理でございました。

 いったい、どうなる事やらでございます……。


 ――――


「ほう! 蛇蛇美じゃじゃみ殿のお父上は蛇朗丸じゃろうまる殿か! では、蛇之吉じゃのきち殿が叔父上おじうえなのじゃな?」


「ええ、良くご存じでございますね」


 転がったまま、ふと見ると。蛇蛇美と蛇子が木興様とお話をされています。

 何だか不思議な光景でございますが、話が盛り上がっているご様子。

 そもそも、蛇蛇美たちが海水浴に付いて来ている事が変なのですが、まさか……。


「この蛇子は、蛇之吉叔父さんの奥さんの親戚筋なんですよ」


「ほうほう。お主等は親戚なんじゃな」


「ええ、小さい頃から蛇之吉叔父さんに、よく一緒に遊んで貰いました」


「立派な戦士じゃったぞ。こんど会う事があったら、酒でも飲もうとお伝えくだされ」


「はい。分かりました! じゃあ、海で遊んで来るわね!」


「ああ、楽しんでおいで」


 このほがらかな雰囲気は何でございましょう……。

 もちろん、遠呂智おろち族とのいさかいは大昔から続いております。

 木興様も大きな戦の経験者。敵の知り合いも居るという事なのでしょう。


 ――――


 やっと、動ける様になった私と華ちゃんは、美狐様達の行方を捜しに浜辺に出ました。

 見渡すと、沖にあるジャンプ台の所に、紅様と航太殿のお姿が……。

 その手前に、ぽっこりとお腹が浮き輪の様になっている美狐様が、仰向けに浮かんでいました。

(美狐様、満腹の状態で泳いではいけませんわよ……)


 どうやら、航太殿と紅様は、飛び込みの高さを競われている様です。

 徐々に高い所から飛び込み、どちらが恐怖心を克服できるのかを、競っている様でございす。

 紅様が上手に航太殿をあおっているのか、航太殿は意地になって飛び込んでいるご様子。

 そもそも、空を飛べる紅様が高い所はお得意なので、航太殿が一方的に不利な気がしますが……。


 いよいよ、一番高い所から航太殿が飛び込まれます。

 勢いよく飛び出されて、足から着水されました。

 水中からなかなか浮いて来ませんでしたが、美狐様の傍に息も絶え絶えといった感じで、浮かんで来られました。

 その姿を見て、紅様が高笑いをされます。


「はっはっは! 航太殿は根性無しじゃ! 飛び込みはこうするのじゃ!」


 紅様は一番高い所に軽々と上がられると、直ぐに飛び込まれ、頭から綺麗に着水されました。お見事です。

 そして、航太殿の目の前に浮かんで来られると……。


 案の定、ビキニはひもが外れて何処かへ行ってしまい、航太殿の目の前には、紅様の立派な胸が……。




 今宵のお話しは、ひとまずここまでに致しとうございます。

 今日も見目麗しき、おひい様でございました。

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