第9狐 「大祭」 その1
「かけまくも かしこき いなりのおおがみの おおまえに かしこみ かしこみ ももうさく……」
朝から
今日は新たに
「
「いえいえ、我々は常日頃から
「左様か。最近はわらわと航太殿の邪魔しかせぬゆえ、感謝の気持ちが消えそうじゃ」
「そう申されずに……。それよりも来客が大勢お待ちですので、お早く
「そうじゃの。今日は忙しい一日に成りそうじゃのう……」
美狐様は本来の人のお姿では美し過ぎて
もちろん、巫女のお姿でもその麗しきお姿は別格で、人族など息を呑み
今日は人族が大勢いる為、変化族の皆様は、全員人の姿に変化してのご訪問となっておりました。
「これはこれは、
「いやいや、最近は静がやけに楽しそうにしております。美狐様と共に過ごせて本当に嬉しい様でございます」
「これは嬉しいお言葉。隠神刑部家の皆々様には、これからも良しなにとお伝え下さいませ」
「ありがとうございます。これは、ささやかなお祝いではございますが、お納め下さい」
「これはご丁寧にありがとうございます。有難く頂戴いたしまする」
隠神刑部家の贈り物は『
その後も来客は後を絶たず、
────
「咲よ! あれは、もしかして航太殿ではないか!」
面談の合間に外を覗かれた美狐様が、参拝に来られたのか、境内を歩く航太殿を見付けてしまわれました。
「咲よ。しばらく謁見を代わってくれぬか?
「な、なりませぬ! 皆様は美狐様にお会いになりたくてお待ちなのです。私などが代理などありえませぬ!」
「うーむ。そこを何とか……」
「なりませぬ!」
「今日は咲が厳しいのう……」
「これは、天孫たる天狐家の皇女であられる美狐様のお勤めにございますれば……」
「わ、分かっておる。
そう言いながら、航太殿から目を離せぬ美狐様でございましたが、案内された来客に気が付かれて慌てて座にお戻りになられました。
今宵のお話しはひとまずここまでに致しとうございます。
今日も見目麗しき、おひい様でございました。
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