ファイルNo.14

アルメイル国最北の都市エデン


エデンの中央に大きく根を張り圧倒する大木がある、その木の名前は

【始まりの命】

その木の横の石碑にはこう書かれている


神を信じる事で貴方は救われます

神は貴方の過去の過ちをお許しになって下さいます

目の前に苦しんでいる人が居れば手を差し出して救いなさい

貴方が助けた事で貴方も救われています

貴方は1人では無い人を愛し人に愛されよ




遙か昔、神々に愛されし生き物達の始まりの地として国内外問わず、訪れる人は少なからず居るが、その特殊な背景がある為にエデンに入れる部外者は特別な許可が必要とされる。

権力者、大富豪、国のトップそんな者は神に愛された土地では無意味な肩書きに成り下がる。



「ハニエル姉様待って下さい」

「アリエル貴女はいつも準備が遅いのよ」

「姉様が早すぎるんですよ」

2人はエデンに住む仲の良い姉妹である

「アリエル今日はどんな服が欲しいの?」

「それは姉様と似たのが欲しいに決まってますよ」

2人は笑顔で楽しそうに歩きながらお店に向かった


2人で買い物を楽しみ欲しい服を買う事が出来た、買い物を終えた後に人気のカフェで休憩をする事に

「ねぇ姉様、恋人の方とはどうなんですか」

「どどどうしたの!そんな事急に聞いてきて」

「そうね、先日嬉しい事を言って頂けたわね」

「えっ!何を言われたんですか、教えて下さいよ」

「それはね、分かるでしょう?!」

「えっ!本当に嬉しいです、姉様が離れてしまうのは寂しいけど幸せになるならこんなに嬉しい事はありませんわ」


「お父様達にはまだ話してないから内緒にしてね」

楽しく話をしていると男性のウェイターが声を掛けてきた

「失礼しますが、何か喜ばしい事でもあったのですか?」

するとアリエルが目を輝かせながら

「そうなのです!姉様が恋人の方と結ばれる事になったのです」

「そうなんですね、そうしましたら私達からも祝福させて頂きますね!勿論サービスですから気になさらず」

「もうこの子ったらすみません、気を遣わせちゃって」

「いえいえ、私達にも幸せな気持ちを分けて頂いてますから」


「ほら姉様を皆がお祝いして下さってるのですから」

「もう」

エデンには愛が満ち溢れ人が人の幸せを純粋に喜べる


ハニエルは両親に恋人を紹介した

恋人は歴史学者の息子で、本人は本が好きな事もあり本屋で働いている

両親は恋人の事は知っていた、本屋に行くと静かに落ち着いた雰囲気で、いつも優しく対応してくれる恋人を連れて来られた時は冗談だと思ってしまう程に自分達も好印象があったからだ。

両親は2人から報告を受けて、祝福した結婚は家族皆に嬉しい事で両親は少し涙を流していた



数年が経ちハニエルは子供にも恵まれていた

アリエルも何年か前に結婚をし子供はまだ小さいがハニエルの子供とは仲良く遊んでいる仲だった


「姉様聞きましたか?最近エデンを解放して人の出入りの自由にしようって人達が動いているって主人が言ってたんですよ」

アリエルの旦那は警察の公安部でエデンの治安維持に努めている、ただ公安部であるが為、誰も職業は知らないのだ


「噂では聞いてるけど本当にそんな人達が居るのかしらね?」

ハニエルは噂話程度ぐらいだと思っていた。

それもその筈なのだ外に出ても、平和そのものデモも無ければ怪しく動き回る人も居ない、そんな現状を目にして疑うのは難しい

「ママ、○○君転けて動いてくれないよ」

ハニエルの子供か走って来て伝えてきたハニエルとアリエルは泣きじゃくるアリエルの子供の元に行った。

アリエルは自分の子供に優しく言葉を掛ける

「ケガはどこ?1人でも立ち上がれる?」

心配してもらってさらに、泣きじゃくるが涙を拭き、鼻水を少し垂らしながら黙ったまま1人で立ち上がった。

直ぐにアリエルに抱き付き声を出して泣いたが、子供が1人でやれる事にアリエルは日々の成長に感動していた。


「アリエル今日は○○君も疲れただろうから

今日はもう帰ってゆっくりしましょ」

「私も○○君可哀想だから早く帰った方が良いと思う」

ハニエルの娘も心配の様だ


「今日はもう帰るわよ」

アリエルは自分の息子と帰りながら息子が

「ママ僕1人でも立てたよ!パパみたいなヒーローに僕もなるんだ!」

「そうだね、カッコ良かったよ」

2人は笑顔になりながら手を繋ぎ家に帰って行った。


さらに時は経ちアリエルの子供は5才になった

「ママ遊んで来るね!」

「気を付けていくのよ」

その日は旦那も家にいた

「お前達は荷物を纏めて皆で逃げてくれ、お姉さんもご両親も一緒に行けるかは分からないが、明日にでもエデンから逃げ出してくれないか」

エデンを解放しようとしている人達はここ数年で

組織を作り上げ、武力衝突を何度もしてきたが、その情報は政府により伏せられてきていた。

そして近々エデン内で大規模な何かを起こすのでは?と公安部には情報を手に入れていたが、日時が分からず警備の増員を政府に要請出来ずにいた。

だからこそアリエルと息子には逃げて欲しかった、公安部に身を置く者としては私情を挟むなどあってはならないが、最愛の妻と息子には・・・

そんな思いから逃げるように言ったのであろう

「あなたはここに残って安全なのですか?

違うのなら私達と一緒に逃げましょう、その後に仕事は辞めたら良いじゃない」


「ダメだ、普通なら家族にさえ公安に居ることは言うのは禁止なのに、君達の安全を優先して国に背いているのと一緒なんだ、だから最後に職務を全うさせてくれ」

自分の愛した人はエデンの為に命を落とすかも知れないそんな恐怖

誰にも言えない、涙がこぼれ膝から崩れるアリエルそんな彼女にそっと

「今回の件が落ち着いたら仕事辞めて、ゆっくりと家族の時間を取り戻そう、だからそれまではエデンの外で待っててくれ」

「はい」

抱きしめ合いながらアリエルは胸の中で泣いていた


夕暮れも近づいてきて

アリエルは落ち着きを取り戻し、普段の明るく元気な表情になっていた

「もう余り見られたく無い顔を見られてしまったわ」

恥ずかしそうに背を向けキッチンに向かうアリエル

「もう夜ご飯は覚悟していて下さいね、次は私が料理で泣かせてあげますからね」

「あぁ君の料理で泣けるなら僕は世界で1番幸せな男だね」

そんな事を言われさらに、恥ずかしくなったアリエルは頬を膨らませ

怒ったフリをして照れ隠しをしていた


そんな時玄関の扉が開いた

2人は子供が帰って来たと思い顔を向けるとそこには大男が立っていた。

男は2mを越える程の体格で顔にはウサギの仮面を付けていた、男のマスクをしている為声が聞き取りづらく、籠もった声で言ってきた

「お前が俺達の邪魔をしている奴だな!

ここで死んで貰う良いな」


男の迫力にアリエルは腰を抜かしてしまいその場から動けなくなった、それを見た旦那は大男にタックルをしアリエルに向かって声を出した

「立って直ぐに逃げろ!俺も長くは抑えられないだから早く」

そう言われたが力が入る訳も無く立てずに居た、大男が旦那を壁に叩きつけアリエルに向かい歩いて来た、目の前に立ち刃物を取り出すと笑いながら振りかざしてきた

「キャアァァァァァ」

「ヤメロー」

大声を出しながらアリエルを守るために、大男の横から体当たりをして床に転がせた

大男はそんな旦那に苛立ち、背中に何度も刃物を刺し大声で笑っていた。

暫くすると旦那は動くことも無くなり、それを見ていたアリエルは涙を流しながら

膝をつきながら言葉にならない声を出しながら近づいていった。

自分の膝の上に旦那の頭を置き泣いている

大男は笑いながら

「一緒にあの世に行けるな」

そう言うとアリエルを襲いその場は血の海になった

犯人はその場を直ぐに立ち去らず、室内を物色し荒らすだけ荒らし金品を取って消えていった。


事件発生からしばらく経ってから、アリエルの息子は帰って来たが家には多くの人が来ており、警察が現場検証をしていたが、ハニエルとその両親も親族皆がほぼ同時に襲われ生存者はアリエルの息子がただ1人であった、犯人は強盗殺人で捜査されたが、エデン内での強盗殺人事態が余りにも少なく、前に起きた事件の犯人は既に死亡しており犯人への足取りは掴めずに事件は迷宮入りした。


アリエルの息子は身元受取人が居なくなった事により孤児院に預けられる事になった


院長はそんな状況事を聞いており、優しく迎え入れてくれた

「○○君ここは君の家だと思って良いんだからね」


後に世間を騒がす猟奇殺人事件を起こすとは誰も知らない。

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